今回、福島市長選挙で争点になった「除染問題」について、山本氏は語る。
「福島市長選で初めて知ったのですが、福島市に渡利〈わたり〉という有名な高線量地域があります。とっくに除染したと思っていましたが、終わってなかったのです」
福島市において除染は、市で作成された計画に基づいて行われ、線量の高い地域から進められている。予算の問題もあり、全地域同時期にスタートできるという状況ではなく、終わっていない場所で不満が募っているのだ。
何より深刻なことは、除染後に出る汚染廃棄物を置く場所がなく、野ざらしになっている現実だという。小林市長が語る。
「いちばん大きな問題は、除染し終わったものを庭先に埋めておいたり、敷地内に積んだままにしてあることなのです。市民の皆さんが最も不満を持っているのは、ここです。仮置き場を福島市内に早急に設置し、庭先のものを仮置き場に移していくということをやらなければならないと私は考えております。集められたものは、国が整備している中間貯蔵施設に移していくという作業を迅速にやっていきたいと考えています」
こうしたことは福島全域で起こっているのだが、40代男性からはこんな声も。
「どこの市長さんも同じことを言うのですが、住民の理解が得られず進まないという繰り返しなのです。できるかどうかはお手並みを拝見するしかありません」
除染されて出た廃棄物は、一度フレコンバッグという袋に詰められるが、それ自体に放射線を防御する仕組みはない。場所によっては、汚染物質が積み上がり、集積地を「人工的なホットスポット」と呼ぶ人さえいる。
「中間貯蔵施設・中間処理施設の早期設置がないのでまったく除染が進みません」(30代男性)
この難問解決への期待を背負う小林市長は、みずからの考えをこう語った。
「少しでも早く市内を安全な状態にしなければならず、待つことはできないのです。そういう部分でも中央とのパイプというのが重要になってくるわけです。中央といたずらに争う必要はありませんが、要求すべきことは要求していきます」
“主犯”である東京電力に対する福島県民の怒りは、当然強い。
「福島で発電した電力は福島県内には供給されないで関東に供給されている。それでいて被害を福島県民が被っている。これはまったく納得ができないことです。原発が安全だと言い続けてきたことや、事故後の対応も含めて、東電に対する市民の皆さんの怒りは当然で、私自身も同じ感情を持っています」(小林市長)
大震災から3年近くたっても福島県民は深刻な状況から一歩も脱していないのだ。