福島県の問題として多数を占めたのは、農作物・水産物に対する風評被害である。小林市長が語る。
「風評被害に対する補償については、私も含めてまったく満足していません。市場に出荷されている作物はきちんと線量を測っており、安全性は確保されておりますので、その情報発信を徹底してやっていくしかないと考えております。風評被害の払拭は、本当に地道にやっていく作業で時間がかかります」
これまで年間の被曝量1ミリシーベルト以下が安全とされてきた。ところが原子力規制委員会は、今月中に、年間被曝量が20ミリシーベルト以下であれば健康に問題ないという指針を出すという。
「国において専門家の皆さんが議論されたうえで、この基準なら大丈夫だという値を出すのであれば、基本的にはそれに従うものだという姿勢です。ただし、現時点で20ミリまで上げても、市民の皆さんが疑問に思うことはあるでしょう。子供さんの甲状腺に対する影響というものが不透明なこともあり、もう少し、特に子供さんの甲状腺への影響を見てからにすべきでないかと思います」(前出・小林氏)
基準値のハードルを下げて「安全」を宣言するというまやかしにも聞こえる指針に、福島県外では断固反対の声が上がりそうである。しかし、アンケートで20ミリシーベルト問題を尋ねると、「条件付き」の人を合わせ、約45%もの人が賛成に手をあげているのだ。
山本氏は県民の不安をあおる「情報災害」についてこう解説する。
「福島に住んでいる人はある程度の覚悟を決めています。ところが、忘れた頃に福島に人が住めるのかといった情報が来て動揺するのです。そうした情報災害が継続しています。実は、福島県は今年の5月から人口が増えています。転勤・原発関連の仕事が理由ではなく、避難先と元の家の二重生活に耐えられないことが原因です。そうした人は、ある程度情報を精査して戻ったのです。いろんな人がいろんなことを言うので、福島県では、自分で判断するしかなくなっているのです」
小林市長は、こう意気込みを語った。
「私自身も福島市を変えるために全力で取り組みますが、市民の皆さんも福島市に活力をもたらすための取り組みを、おひとりおひとりが行ってほしいと考えます。除染の迅速化をまず第一に行います」
全国民が福島県民の悲痛な声に耳を傾けるべきではないか。