関東圏の舞台は福島から新潟に移り、関西の小倉は小休止。その新潟の開幕週を飾るのが、名物となった直線のみの芝1000メートルで争われるアイビスサマーダッシュである。
今年で21回目という歴史の浅いGIII戦だが、いくつかの特徴がある。
コーナーがある普通の競馬は、コースの真ん中よりも内側で最後のツバ競り合いを演じることが多いが、この直線のみの電撃戦は、本来、使われることがほぼ皆無の、コースの外側を走った馬にチャンスが多く転がり込んでくる。芝の傷みがほとんどなく、クッションがよく利いていてスピードに乗りやすいからだ。
これまでフルゲート(18頭)で行われたのは8回しかないが、馬番を真ん中でズバッと分けると、内枠(1~9番枠)が9勝(2着7回)、外枠(10~18番枠)が11勝(2着13回)。やはり、外枠を引いた馬が有利であることがわかる。
ちなみに、18頭立てで行われた場合のみを選出してみると、内枠の2勝(2着3回)に対して、外枠が6勝(2着5回)と、圧倒的に外枠の馬が連対を果たしている。このあたりは頭に入れておくべきだろう。
そして「夏は牝馬」という格言があるように、真夏の盛りで行われるため、暑さと関係してくると思うが、牡馬の7勝(2着11回)に対して、牝馬が13勝(2着9回)と、やたら強い。出走頭数では牡馬が牝馬を上回っていることを思うと、このことは注意しておきたいところだ。
あとは瞬発力とスピードがモノを言う競馬だけに、生きのいい4、5歳馬の活躍が目立っている。
4歳馬が6勝(2着5回)、5歳馬は7勝(2着8回)、6歳以上の馬が5勝(2着4回)。さらに出走頭数が少ない3歳馬が2勝(2着3回)であることを加えると、5歳以下と6歳以上での差は歴然だ。
これらのデータを念頭に置いて、今年の顔ぶれを見てみよう。
フルゲートは期待しづらく、枠順に関してはあまりこだわらなくてもいいかもしれないが、それでも有力、人気どころの馬が内めの枠に入るようなら、多少は割り引いて考えたい。
3歳馬はオールアットワンスとモントライゼの2頭。ともに有力候補の一角だが、牝馬ということでは前者のオールアットワンス。背負う斤量が51キロ(4歳以上の牡馬は56キロ、3歳牡馬は53キロ)というのは、何といっても有利である。いくら穴党といえども、ここは同馬に期待したい。
前走の葵ステークスの内容がよかった。フルゲート(18頭)の多頭数競馬ながらスッと好位につけ、しまいもしっかりと伸びをみせて、勝ったレイハリアにコンマ1秒差の3着。しかも3カ月ぶりの実戦で、体重が12キロ増えていた中での好走だった。ひと息入っていただけに、中盤で少々、折り合いを欠く場面があったことを思えば、改めてこの馬の能力の高さを評価すべきだろう。
前走後は、ここを目標にいたって順調。短期放牧を挟んでしっかりと乗り込まれてきている。1週前の追い切りもなかなかの好内容で、状態のよさがうかがい知れる動きだった。
中舘調教師も状態のよさを強調し、期待感をこう口にする。
「帰厩して間もないが、牧場で十分やってきた。以前と違って体が丈夫になったのは強調できる。スピードが持ち味だが、抑えても競馬ができるタイプ。センスがよく、初めての直線競馬でも楽しみ」
一族にドクターデヴィアス(デューハーストS、英ダービー、愛チャンピオンS)、ダンシングレイン(英・独オークス)、スズカフェニックス(高松宮記念)など活躍馬が多くいる良血。古馬相手でも大きく狙ってみたい。