中央場所は東京・阪神開催が閉幕。今週から福島・小倉・函館での夏競馬となる。福島は2月の地震によるスタンド等の損傷で、4月の開催が新潟に代替となったため、今年初めてとなる「みちのく開催」。一時は復旧に時間がかかり、再び代替開催か、とみられていただけに、無事、開催できることは何よりである。
その開幕週のメインは、恒例のラジオNIKKEI賞。キャリアの浅い3歳馬によるハンデ戦で、難解このうえないレースだ。
まだこれからどう変わるか、どう成長するか判別しづらいこの時期の3歳馬同士に、実績を主に斤量差をつけて競わすのは少しばかり無理筋ではないか。それゆえ、以前のように“残念ダービー”とあだ名された「ラジオたんぱ賞」時代と同じく、定量戦に戻してはいかがか。当欄では常々、そう提言してきた。
が、それもかなわぬ相談であり、とにもかくにも頭を悩まされる難しい競馬。よって各馬の能力をじっくりと吟味することが、まずは肝要だ。
今年で第70回を数えるが、過去を振り返ってみると、よく荒れる重賞であることがわかる。ここ何年か勝ち負けした馬は、秋の菊花賞を含め、今後活躍していく馬も少なくなく、くどいようだが、素質の有無を見極めるのが第一義と言っていい。
まずは顔ぶれを見てみよう。一線級でクラシック路線を歩んできた馬は見当たらない。それでも波に乗りかけた馬はいて、すこぶるバラエティーに富む。アサマノイタズラ、ボーデン、ロードトゥフェイムなどはそのクチで、これが人気どころになるだろう。
しかし前述したように、力をつけ、これから伸してきそうな馬は多い。アイコンテーラー、アビッグチア、グランオフィシエ、プレイイットサムは、目下連勝中の上がり馬。当然、人気の一角として評価されるだろう。
あれこれ悩むが、最も期待を寄せてみたいのはヴァイスメテオールだ。この馬も新馬戦を勝ち、2戦目に重賞(京成杯4着)に挑むなど、クラシック路線で注目されていた存在。しかし、前走、ダービートライアルのプリンシパルSで4着に敗れ、大舞台に上がれずに春競馬を終えてしまった。
とはいえ、最大手ノーザンファームの生産馬(所属はシルクレーシング)。秘めた能力はかなりのものであることは間違いない。
これまでの4戦を振り返ってみると、2戦目の京成杯は3カ月ぶりの実戦で、いきなりの重賞は厳しかった。それでも大きく負けたわけではなく、続く3戦目の平場を快勝。それも不良馬場の中、豪快な差し切り勝ちだった。
そして前述したプリンシパルSに挑んだわけだが、大きく出遅れての4着。参考外であり、それでも勝ち馬とコンマ5秒差だったことを思うと、今回は改めて注目すべきである。
前走後は短期放牧でリフレッシュ。早くからここを目標に乗り込まれ、ほぼ万全と言っていい臨戦態勢を敷いている。
「ひ弱さが抜けて、かなり良化。力をつけてきている。中間の稽古内容も非常にいい」
厩舎スタッフがこう口をそろえ、状態のよさを強調するように、見た目にもキリッと締まった馬体で、かなりいい状態にあることが察せられる。ならば晴雨にかかわらず期待していい。
母のシャトーブランシュは、マーメイドS(芝2000メートル)の勝ち馬で、母系は欧州の一流血脈。相手関係からハンデは恐らく53キロまで。大型馬でありながら器用さを持ち合わせており、小回りの福島も問題あるまい。チャンス十分とみた。