雨上がり決死隊の解散の余波が続いている。解散の根本を作り出したのは宮迫博之と本人も認めているが、ただ、はたして本当に彼だけに原因があるのだろうか?
まず、宮迫と同じく闇営業騒動で吉本を追われたものの、現在は冠番組「ロンドンハーツ」(テレビ朝日系)に復帰しているロンドンブーツ1号2号・田村亮のケースと比較して考えてみたい。彼は相方・田村淳による緻密な道筋での復活計画のもと、今の地位に戻っている。
淳は、吉本との契約を解除された亮を迎え入れるため、自分の会社を作り、そこの所属タレントとすることで、救ってみせた。さらに「ロンドンハーツ」にいきなり戻らせるのではなく、スタジオの外から、徐々に世論の動きを見ながら、かつての自分の隣に戻らせるというプロデュース能力もまたみごとだった。
翻って、同じように吉本を追放された宮迫に、相方・蛍原徹はどのような救いの手を差し伸べただろうか?確かに宮迫はYouTube開設も事後報告で、開始時期にも蛍原は違和感を覚えたという。だが、それについて蛍原は直接、宮迫を強くとがめたのだろうか?ただ我慢に我慢を重ねて最後に自分の堪忍袋の緒が切れただけに見えてしまうのである。もちろん宮迫も分が悪いが、その性格を知っている蛍原なら、思い込んだら前に突き進んでしまう猪突猛進の性格を理解して、何か行動を起こさなかったのだろうか。
宮迫曰く、蛍原とは逐一コミュニケーションもとっていなかったということだが、今年の2月放送の「あちこちオードリー」(テレビ東京系)で蛍原は電話やメールでお互いやり取りしていることを明らかにしている。また昨年はコロナ禍でなかなか外出できないことも蛍原自身が語っていたことだ。
だが、そんな中、蛍原は待つばかりで何をしたのだろうか。何の後ろ盾もなくなった宮迫が当座の生活を支えるために、今、目の前の仕事相手に必死になる精神状況は容易に想像できる。そして蛍原は、自分から解散を今年4月に切り出したとのことで、その理由は、「方向性がズレていった」とのことだが、それこそ、それまで、みずからの想いを十分、伝えてきたのだろうか?
去る8月17日にネット配信された「アメトーーク! 特別編 雨上がり決死隊解散報告会」で、蛍原は、宮迫のYouTubeを見たことがあるかと聞かれた際、「加藤浩次の動画は見た」と発言している。おそらく宮迫のYouTubeに加藤が出演した回のことを指すと思われるが、その程度しか蛍原が見ていなかったとすれば、YouTubeの世界で何とか認めてもらってでも復帰したという想いで、少人数のスタッフで毎日必死に動画をあげ、視聴者を楽しませていた宮迫のことがどれだけわかるのだろうか?
そして約2年間、「アメトーーク!」(テレビ朝日系)の中で宮迫のことをほとんど口にしてこなかったのも、蛍原の芸人としての度量のなさを示しているように思える。例えばダウンタウン・松本人志は、相方・浜田雅功の“不貞グセ”について言い散らしている。これは将来的にそうなることを見越して予防線を張ってもいるのかもしれないが、それも愛あるイジリであろう。
また、NON STYLE石田明は、井上裕介が車の接触事故を起こしたあと、執拗と言われるほど、そのネタで相方を追い詰めていた。それは厳しい世論の声を受け止めながら、みずからさらに鬼になることで、その声を逆に和らげようとする狙いであったのかもしれない。
だが、蛍原は宮迫のことをイジることもなく、悶々と自分の中に不満を抱えるばかりに見えた。逆にそれが、周囲にかえって気を遣わせることになってしまったのではないだろうか。
さらに彼は、先の「解散報告会」で、宮迫のYouTubeに後輩芸人が「コラボしてきました」と言われるたびに「しんどい」と心境を吐露していたが、本当に彼のことを応援する気があるなら、むしろ歓迎すべきだったようにも思えるが…。はたして、100対0で、本当に宮迫が悪いのか。
(魚住新司)