地元紙記者はこう続ける。
「コンサルタントの後ろには大手ゼネコンがいたケースもありました。その計画を実行しても地元にお金は落ちず、東京から入ってくるお金が本社のある東京に戻るだけのものだった」
沿岸部を含めて、被災地では災害時にスムーズに避難場所へ移動できるよう、避難道路の建設が進められている。岩手県在住の60代男性はこう嘆くのだ。
「半壊した家屋を1000万円借りて修理しました。ところが、避難道路の建設計画に自宅が引っ掛かりました。しかし、計画が現実に実行されるのかがわからない。決めてくれれば、移住の交渉に入れるのですが、それもままならない。地面の揺れが収まってきたと思ったら、今度は復興事業に揺さぶられて、どうしたらいいのか‥‥」
一度決まったこととはいえ、はたして被災者のためにならない復興事業計画を修正することはできないのだろうか。阪神・淡路大震災の経験から、これまで東北の被災地に提言を送っている兵庫県震災復興研究センター事務局長・出口俊一氏が語る。
「役所は計画の変更をしにくいという現実はありますが、一度決めたら不変ということではありません。一般の被災者は区画整理のシステムに精通しているわけではありませんが、土地区画整理事業で自分の所有しているところが引っ掛かったのであれば、都市計画審議会にかけ直せばいいのです」
阪神・淡路大震災の場合、都市計画は2カ月で決定されたという。反対住民が多かったことから、当時の知事が柔軟に計画の修正を認め、復興を進めていった経緯がある。
福島県の場合、震災による被災の他に、原発災害が加わっている。現在でも除染が行われているが、原発から31キロ地点に居住する、「福島で生きる!」(洋泉社)の著者・山本一典氏は現地の姿をこう語る。
「最近の福島県民のアンケート結果では、帰還を望まない人が増えています。だから人が戻らない土地の除染にお金を使うより、お金を配って生活再建をという声も強くあります。復興という言葉を使う時、普通は地域再生を意味しますが、福島の場合、早期の生活再建こそが復興じゃないかという意見が生まれています」
一方で政府は、ようやく除染で出た汚染土の中間処理施設用の土地買収の方針を固めた。14日には石原伸晃環境大臣(56)が福島県知事を訪ね、建設要請を行ったが、被災者の現実を見るかぎり、遅きに失したと言わざるをえない。