あれから3年──。長い月日が流れたようで、まだまだ被災地には多くの爪痕が残り、被災者たちからも痛々しい記憶が消えていない。未曾有の大惨事は、絆のつながりを確認させてくれたはずだ。ところが、“悪魔たち”は、己の欲望を満たすために東北を食い物にしているのである。
福島第一原発から放出された放射性物質を取り除くため、福島県内では除染作業が行われている。復興を目指して、地元民だけではなく、県外からも多くの人手が集まり、作業は続けられてきた。
昨年初めて、いわき市の現場に入った50代のA氏も他県からの出張組だが、悪びれる様子もなく、こう口を開いたのである。
「雇ってくれたのは、4次請けぐらいの会社で、現場は俺に任せきりだった。俺も地元から舎弟を十数人連れて現地に入ってたこともあり、現場では俺が責任者だったんだよ。こっちは金をもらえればいいわけだし、適当にやってたな」
思わず耳を疑ってしまったが、A氏は元暴力団幹部だったという。雇用した業者のずさんな管理が問題なのは言うまでもないが、元暴力団幹部が舎弟とともに「適当に」作業をするというのだから‥‥。
「ガレキとか草とか、袋(フレコンバッグ)に詰めて、よく川に投げ捨てたな。もっとよくやったのが、枯れ葉を集めて袋に入れたら、スコップで穴掘って、そこに埋めちゃうんだよ。早く終わりにしたいからさ(笑)」(前出・A氏)
除染作業には、高圧洗浄機で放射性物質を洗い流す工程もあるようだが、A氏の仕事はやはり手抜きだったというのである。
「高圧洗浄でバーッと流せば放射能は落ちるよ。ただ本来は流れたものをバキュームで吸って、ドラム缶に入れないといけないんだけど、面倒くさいから流してそのままだな」
にわかには信じられない除染作業員の告白だが、なんと南相馬市で除染作業に従事する、同じ50代のB氏も同調するのだ。
「現場はリーダーの考えひとつですからね。普通は線量を測って高いところから丹念に洗い流そうと考えるんでしょうけど、面倒くさくなれば関係なくなってくる。休みたくなれば、リーダーの指示で休んでますよ。こんな調子では終わるのに、何十年もかかるんでしょうね」
ただし、除染作業の現場では、ルールの厳罰化が徹底されるようになっている、との声も──。
「上からの規制が厳しくなって、入れ墨が入っているのがバレればまず働けなくなったな。わりと、ちゃんとやるようにはなったよ。街では人の目もあって、市にクレームなんか入れられたら仕事を失うケースも出るからやるけど、でも田舎に行ったら、今でも適当だよ」(前出・A氏)
一方、除染作業において姿勢が問われてきたのは、こうした不良作業員ばかりではなかった。一部下請け業者にも問題は山積みだったようである。
福島県の最低賃金は日当5500円で、環境省が発注する除染作業は特殊勤務手当として1万円が支給される。つまり、除染作業員は、多くの現場で最低でも1日1万5500円が保証されているのだ。
ところが、正当な報酬を作業員に支払わない、悪質な下請け業者が跋扈し、問題は深刻化するばかりなのだ。
「3次請け、4次請けで仕事を取るために、表面上、ヤクザがカタギの社長を立てた会社を作って入り込んでるんだよ」(地元の人材斡旋に詳しいアウトロー関係者)
こうした違法業者は独自のルートを使い日本全国から作業員を集めてくるのはお手のもの。例えばこんなケースがあったという。
「月末締めの翌月払いにして2カ月、仕事させるんだよ。その間、宿舎はあって飯は出るから、酒代、タバコ代ぐらいだけ前借りさせてやるの。それで2カ月たったら、カタギの社長を逃亡させて、『社長が逃げちゃった』って、兄貴分のコワモテが自分も被害者ヅラして顔出すって算段よ」(前出・アウトロー関係者)
給料を取り損ねるのか、と絶望感を漂わせる作業員たちに向かって、
「いくらで約束した?」
「1万5500円です」
「俺が面倒みてやる。その代わり、全部は面倒みれねえから、半分だな」
と言い放つのだという。
「刑事事件にならないように、〈これ以上の請求はしません〉って一筆サインまで書かせたって話だ(笑)。1日7000円にされた作業員たちは泣くに泣けないだろうよ」(前出・アウトロー関係者)
◆アサヒ芸能3/11発売(3/20号)より