福島県では除染廃棄物を仮置き場に運搬するトラックが住民を悩ませているという。山本氏が語る。
「時間帯によって大渋滞が発生し、住民は裏道を使ったりしています。もし中間貯蔵施設ができれば、毎日何千台というトラックが国道を通過します。今から施設用の専用道路を造ることもできませんので、交通網のマヒを心配しています」
車が主な交通手段であるエリアでは、救急車などの緊急車両が通れないおそれも出てきている。政府による意思決定の遅れが、こうした混乱をもたらせたことは言うまでもない。
また、除染事業が住民の就業に歯止めをかける矛盾も起こっている。
「住民に戻ってもらうためにはまず雇用ということで、川内村では数社の企業誘致を行い成功しました。ところが、除染のほうがお金になるので雇用しようにも人が集まらないのです」(山本氏)
福島、宮城、岩手3県の被災地に共通しているのが復興住宅への移住問題だ。
地元紙記者が語る。
「仮設住宅の中にコミュニティができて、一人の脱落者も出さずに全員一緒にここを出るという意識が芽生えました。復興住宅に移ると、収入に応じた家賃を払わなければなりませんが、公務員など安定した職の人はともかく、将来まで保証される就業が確保できない人は仮設から抜け出せないのです。計画に従って作られたにもかかわらず、空き復興住宅が林立する結果になっています」
自治体で処理しきれない問題を解決する最終窓口は国である。11年12月には、復興庁ができ、岩手県石巻市には前線基地としての支所も設けられた。しかし、機能的には疑問符が付いているという。
出口氏が語る。
「『石巻の支所はあまり役に立たない』と地元の人は言います。ここには権限がなく、全て東京にお伺いを立てなければなりません。本来なら復興庁は単独で決済できないといけないはずなのに‥‥。しかし、寄せ集めのようになっており、従来の縦割りが残り、国交省や経産省などとやり取りをしないと、うまく動かない状態です」
もちろん、行政は万能ではない。被災地の住民たちの慟哭は、全体の中の“小さな声”としてかき消されるほかないのだろうか。
「住民の意見を吸い上げるのは役所の担当部署で、もう一つのチャンネルは議員です。本来は、住民の声を拾い上げ伝達する中間支援者が十分にいればいいのですが。もちろん被災者の方から私のところに相談があれば助言はできます」(出口氏)
震災から3年がたとうとしている中、復興事業は新たな局面を迎えている。