領土や歴史などを巡る対立で冷え込む隣国の韓国・中国との外交関係。さらには、“北朝鮮のNO2”張成沢氏の粛清で、東アジア情勢は先行き不透明だ。東京新聞編集委員の五味洋司氏が語る。
「中国とのパイプ役であった張成沢氏を粛清したことで、北朝鮮が経済援助を求める相手に日本を選択するというシナリオも十分考えられる。それによって日朝関係が日韓や南北に先行するのを、韓国はいちばん嫌がります。日本に頭を下げて北朝鮮情報を教えてもらうなどというのはプライドが許さないですから。北朝鮮という“外圧”によって、今年は韓国の対日路線が軟化してくる可能性が大きいでしょう」
しかも、韓国は経済の悪化が深刻化しているだけに、反日の朴槿惠〈パククネ〉大統領が土下座して日本に資金援助を無心する可能性すら出てきている。
「韓国は昨年末に倒産ラッシュが到来する一方、財閥の寡占化が進み、雇用状況はまったく改善していない。ここにきて、朴大統領の強硬路線にも国内から批判が出てくるばかりで八方塞がりの状況。経済危機が表面化すれば、日本と冷えきった関係を解消し、通貨スワップ(緊急時の外貨の融通枠)の拡大をはじめ、経済援助をお願いせざるをえないでしょう」(韓国特派員)
さらに、中国に至っては問題は山積みだ。昨年11月、東シナ海上空に防空識別圏を設定。尖閣諸島も含んでいたことから、日本国内でも一気に緊張が高まった。中国情勢に詳しいジャーナリストの富坂聰氏が語る。
「中国国内の『日本を挑発してやろう』という勢力に、正当な理由を与えてしまった。防空識別圏内で日本の民間機や軍用機に対して危険な行為を行っても、中国の国内法で裁かれることはないという状況を作ってしまったわけですから」
誕生から1年が経過する習近平政権だが、成果らしいものはまだあげられていない。株価も景気も低迷し、外資は次々と引き揚げている。物価も高騰し、北京を中心に大気汚染などの環境悪化も目立っている。
「経済格差は深刻で、民衆の不満がいつ爆発してもおかしくない状況です。日本に対する強硬姿勢だけが若者を中心に支持されているので、安易な軟化には踏み切れない。日中双方が真剣に歩み寄りを考えないかぎり、小規模な局地戦が年内に起きてもおかしくありません」(前出・富坂氏)
東アジア各国に関する外交情勢には、引き続き大きな注意が必要だろう。