北朝鮮が中国から離れていった背景には、金第一書記の国際感覚があるという。渡邉氏が続ける。
「日本の認識では、貧しい国のトップは低い教育しか受けておらず人脈も狭いように感じるでしょう。しかし、彼らは国家予算をトップの育成に投入します。金正恩もスイスの寄宿学校で教育を受け、欧米の人脈も持っていて国際感覚もある。何十年と瀬戸際外交を続けながら『金王朝』を3代維持しているんですよ。韓国より北朝鮮のほうが外交力が高い証拠と言えるでしょう」
そんな金第一書記が中国から離れた理由は他ならぬ中国自身の危機にある。「仲良く自滅する中国と韓国」のもう一人の著者・宮崎正弘氏がバブル崩壊確実となった中国の実態を明かす。
「不動産バブルが失敗に終わり、リーマン・ショック直前の状況です。過去10年で2000兆円を不動産に投資して、できたのはゴーストタウンばかり。100万都市を作って2万8000人しか住人がいないなどメチャクチャです。計画経済に従って作るだけ作って何も実りませんでした」
投資の元手となったのは地方政府が銀行から借りた金。焦げ付いた投資は総額で500兆円にも上る。
欧米のエコノミストの間では、中国のバブルが「いつはじけるか」ではなく、「どの規模ではじけるか」という認識になっているというのだ。
「今年、中国は人口オーナス(人口構成の変化が経済にとってマイナスに作用する状態)に転じます。PM2.5などによって環境も限界を超えて臨界に入っています。北京の警察官の平均寿命が48歳ですから」(渡邉氏)
国家の出す数字に、信ぴょう性が持てないのも中国の特徴である。しかし、現象はウソをつけないはずだ。それは中国共産党の幹部たちの動きを見れば一目瞭然である。
「中国の規制緩和というのはメチャクチャで、地方政府が勝手に債券を出してもいいようにしました。危機意識を持った幹部たちは自分の蓄えた金を、ものすごい勢いで海外に逃がしています。銀行間の金の移動をアメリカは把握していて、総額は実に約110兆円になります」(前出・宮崎氏)
そんな中国にみずから接近したのが韓国だ。その理由の一つが、深刻な経済危機である。GDPの2割を占めるサムスン電子が前年比で約4.3%減、現代自動車が8.7%減と発表した。韓国紙「中央日報」は9日、こう報じている。
〈サムスン電子に続き‥‥製造業の韓国代表、現代自動車にも赤信号〉
中国にはバブル最後の金があり、韓国にはまったく金がない。そこで韓国は中国を頼ったのだという。
「韓国のマスコミは、中国経済の暗部をほとんど伝えません。韓国人のほとんどは依然『昇る中国・沈む米国』という世界観です。2000年にわたり培われた属国根性は根深いものなのでしょう」(室谷氏)