死者は最悪2万3000人、経済被害は国家予算に匹敵する約95兆円──。今後30年で発生する確率が70%の首都直下型地震の被害想定がまた大きくなった。加えてXデーが迫る富士山噴火。廃炉に向けての作業を進める福島第一原発は大丈夫か。武蔵野学院大特任教授の島村英紀氏が語る。
「これまで関東地方には十数年に1回はM6~7の大きな地震があった。ところが、大正の関東地震以降、90年の間に東京で震度5の地震を観測したのはたった5回。明らかに少ない。巨大な地震が多い状態に戻るのはそう遠くではありません」
東京オリンピックを7年後に控えているが、オリンピックの競技会場39施設のうち、実に23施設が東京湾岸に集中している。大震災が起きた場合、湾岸地域の被害は甚大になる。
「安政の大地震は東京湾北部、隅田川河口を震源としたものです。地震の規模はM7級で当時1万人近い人が亡くなった。今のお台場や晴海、夢の島などは埋め立て地。東日本大震災の時も東京湾岸地域では深刻な液状化被害が起きましたが、直下型だとさらに甚大な被害が起きる」(前出・島村氏)
もしオリンピック開催の真っただ中に地震が発生すれば、会場は倒壊し、選手たちが逃げ惑う阿鼻叫喚の事態となろう。
しかも3.11以降、日本列島を走る断層が非常に不安定になったと言われるだけに、福島第一原発を再び大地震が襲う可能性も十分にありうるという。
「地震の震源が内陸に移動し、巨大地震の直後、福島でもM7級が発生した。首都直下型地震の発生も心配ですが、内陸の地震に福島第一原発が襲われるのも心配です。とりわけ、4号機は燃料棒が貯蔵してあるプールが高い所で不安定な状態であるため、もし近くで大きな地震が発生すると取り返しのつかない事態になる」(前出・島村氏)
一方、宝永の噴火以来、300年間、眠り続けている富士山も噴火が目前に迫っているという。長年、富士山を観測している火山学者によれば、
「富士山の風穴の万年雪は徐々に小さくなっている。これは富士山にマグマだまりができていて、地熱が上がっている証拠です。富士山は地下ではすでに活発に火山活動を行っています。また12年には大量の地下水があふれだし、富士五湖に『第6の湖』とも称される幻の湖が出現した。これらは過去の経験則から噴火の前兆現象と見られます」
その被害はかなり広範囲に及ぶ。原因は火山灰だ。
「火山灰というのはガラスの細かい粒子のようなものです。飛行機のエンジンが吸い込めば、停止するし、電線に降り積もれば重みで切れ、停電になる。噴火すれば、首都機能はストップするでしょう」(前出・島村氏)
まるで小松左京氏のベストセラー「日本沈没」を彷彿とさせる光景が、目前に迫っているのだ。