さらにこの問題は、事故を起こした福島第一原発そのものへの外国人労働者投入への可能性も示唆している。原発についての賛否は、本稿が目的とするところではない。一方で「原子力発電所」は、その国の先端技術の集大成であり、それらの一部は機密となっている。
そして、「原子力発電所」は核兵器に転用可能なプルトニウムを副産物として生み出し、大量破壊兵器への技術転用の危険性を含む。イランや北朝鮮の核開発が、国際問題となるのは、このリスクが原因である。
このような特徴を併せ持つ原発に外国人を?──そう思う読者も多いのではないだろうか。しかし、福島原発事故から4カ月後の11年7月3日、産経新聞がウェブ版で「ベトナムから原発技能実習生を受け入れ 国際人材育成機構が延べ6千人規模」という記事を配信している。
〈インドネシアなど東南アジア諸国から実習生を受け入れて、日本の技能を習得させる取り組みを進めている国際人材育成機構(アイム・ジャパン)は、ベトナム人の原子力発電技術者の養成事業に乗り出す〉
という内容である。ここで“利用”されるのが「技能実習生」という制度だ。環太平洋未来研究所理事長で元衆議院議員の小西理氏が解説する。
「技能実習生の受け入れは天下り団体・JITCOが取りしきっていて、彼らのさじ加減でどうにでもなります。福島に外国人の技能実習生が流れ込んでくるのは、十分考えられますね」
当時この計画を発表した国際人材育成機構「アイム・ジャパン」の東北支局に連絡をすると担当者は、
「原発のほうにベトナム人の技能実習生は、斡旋しておりません」
と、答えた。一方で毎日新聞は7日、「〈福島原発事故〉廃炉作業員不足 協力企業の5割が懸念」という速報記事を配信。
〈被ばくのリスクのため若手が集まりにくく、今後高齢化が進めば、担い手や技術の空洞化を招く可能性もある。廃炉が遅れれば地元の復興を妨げる恐れもあり、作業員の継続的な確保が課題となる〉
と報じており、人手に対する抜本的な対策はなされていないことが明らかになっている。今回、取材に協力してくれた佐藤氏は、取材後、ため息交じりでこうつぶやいた。
「俺たちは、土地を汚されて、生活も乱されてさ、今頃になって失ったものの大きさに気づかされるんだよな」
福島での復興は、まだまだ道半ばである。
ジャーナリスト:八木澤高明