年末が近づくと、一昨年末にビートたけしが「第70回NHK紅白歌合戦」で歌った自身作詞・作曲の「浅草キッド」を思い出す。
芸人たちの心にしみわたる名曲だったが、今年は、88年に刊行された自伝的小説「浅草キッド」を原作とした映画が、またひと泣きさせてくれそうである。
ビートたけしの師匠である深見千三郎と過ごした青春時代を描いた作品で、監督・劇団ひとり、大泉洋と柳楽優弥のダブル主演で、相方のビートきよしをナイツ・土屋伸之が演じる。12月9日からNetflixにて配信中だ。
オードリーの若林正恭は「新幹線でパソコンで見てたんですけど。帰り、静岡から東京まではずっと泣いてましたね。春日にバレたくないから、泣いてんの。スゴい声を押し殺して、ノドを潰しながら見てて。めちゃくちゃいい映画でしたよ、本当に」とべた褒め。
東野幸治も「さすが劇団ひとり、抜群やなって思いました。見てない方がいたら、ぜひ見てほしいと思います」と語り、ニューヨークの屋敷裕政も「ヤバイわ、劇団ひとりさん。本当、『浅草キッド』よかったなぁ」と異口同音。
ところで、評判は良いが、漫才師を描いた映画だけあって、そのシーンに求められるレベルは高く、撮影は難航を極めたそうだ。
監督の劇団ひとりは、ビートたけし役の柳楽優弥の漫才に納得がいかなかった様子で、こう振り返る。
「柳楽優弥さんは、(土屋の)スケジュールが取れなかったから、ずっとツービートの漫才の稽古、助監督と一緒にやってたんです。『イマイチだな』って思って」
また、ビートきよし役の土屋も大変さを語っている。「最初の顔合わせみたいなところで、漫才の本読みだけ、監督のひとりさんと一緒にやった時に、柳楽さん、やっぱり漫才できなかった。俳優さんだし、初めてだから。で、たけしさんに似せてるって感じでもなかった。自分なりの演技プランでやろうとしてたのね、最初はね。そしたらひとりさんがスゴいそこは言って。イメージしていたのと違うみたいで」
ただし、土屋は柳楽をかばって、こうも口にした。
「ツービートの漫才、速すぎて。だから、1人で(きよしの)イメージトレーニングしている間も『これのたけし役側って、たぶん、どの芸人でも無理だよな』って。(早口の)ウーマンラッシュアワーの村本君でも無理だと思う」
そして、ついに漫才を磨くために現場に助っ人が入った。映画を見た有吉弘行によると「なんか全部見たらさ、たけしさんの指導、松村邦洋って書いてあって。スゴいよね。現在のビートたけしと、昔のビートたけしの指導ね」という。松村は長い時には、1日8時間ほど柳楽に所作を教えた。土屋は、
「1回、漫才の練習しに行ったら、松村さんがいたんだけど。事故った後のたけしさんの話をずっとしてたり、『そこは使わないですよ』って」
と、熱心に教える松村を目撃したようだ。
坂下ブーラン(さかした・ぶーらん)=筆名=:1969年生まれのTVディレクター。東京都出身。専門学校卒業後、長寿バラエティ番組のADを経て、高視聴率ドキュメントバラエティの演出を担当。そのほか深夜番組、BS番組の企画制作などなど。現在、某アイドルグループのYouTube動画を制作、視聴回数の爆発をめざし奮闘中。