●ゲスト:劇団ひとり(げきだんひとり) 1977年、千葉県生まれ。高校時代に『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の「お笑い甲子園」に出場したことを機に芸能活動を開始。2006年、『陰日向に咲く』(幻冬舎文庫)で小説家デビュー、100万部を超えるベストセラーに。2010年、2作目の小説『青天の霹靂』(幻冬舎文庫)を発表、2014年に同作を原作とした同名映画で初監督を務めた。監督と脚本を務めたNetflix映画『浅草キッド』が、Netflixにて全世界独占配信中。
お笑い芸人としてだけでなく、作家や映画監督としても非凡な才能を持つ劇団ひとりが「浅草キッド」を映像化。ビートたけしや浅草への憧れと愛を全て詰め込んだ。たけし本人も涙したという作品を天才テリーはどう評するのか。最後にはなぜか「引退勧告」まで飛び出して‥‥!?
テリー 監督と脚本を務めたネットフリックスの「浅草キッド」、ほんとにいい作品ができたね。
ひとり おかげさまで評判も良くて。ほんとに良かったです。
テリー 相当プレッシャーがあったでしょう。
ひとり もう不安だらけでしたね。(ビート)たけしさんの半生に泥を塗ったら、もう芸能界にいられないと思ってたので。
テリー それはどうやってハネのけたの?
ひとり これは絶対に僕しか撮れないという思い込みですね。たけしさんに対する愛や憧れもそうだし、当時の浅草への憧れとか、深見千三郎師匠も、僕は偶像化してるぐらい憧れの人なので。そういう人は山ほどいますけど、その中で映画的なスキルを含めたら、きっと僕が適任だろうと。勝手に思い込んで、自分を鼓舞しましたね。
テリー 俺、最初にたけしさん役の柳楽優弥さんが出てきた時、「あれ、本人が出てるの!?」と思って、すごくビックリしたんですよ。
ひとり ずっと間近で見てたテリーさんにそう言っていただけるのは嬉しいですね。
テリー あれ、声は松村さん(邦洋)でしょ?
ひとり たけしさんの顔はみんなが知ってるので、どこまで寄せたらいいのかっていうのは、すごく考えたんですけどね。結局、できるだけ寄せたほうが単純にワクワクするなと。それで日本でいちばん優秀だと言われてる特殊メイクチームにお願いして。
テリー あ、そうなんだ。
ひとり そしたらすごく似たので、だったら声もいちばん似てる人にやってもらったほうがいいだろうということで、松村さんにお願いしました。
テリー ああいうのって、例えば俺でもたけしさんに似るの?
ひとり それが、やっぱりある程度、骨格の条件はあるみたいなんですよ。実は柳楽さんも最初は全然似なくて。特殊メイクチームがあの手この手でいろいろやってくれて、どうにか似てくれたんですけど。逆に僕はナイツの土屋(伸之)君のほうが(ビート)きよし師匠に似てると思ってたんですけど、特殊メイクチームから言わせると、全然違う顔だからできないんですって。そういうのはすごく勉強になりましたね。
テリー これ、たけしさんは何か言ってくれた?
ひとり 直接お会いした時に「良かったよ。タップのシーンも見事だったね」「あいつら頑張ったな」とか、テレビでも「俺も泣いちゃったよ、いい映画だな」なんて言ってくださって。ご本人にそう言われるのは、何よりのお墨付きなので、ほんとにありがたいですね。
テリー 世界で最もモノゴトを斜めに見る、厄介な男だからね。
ひとり お会いした時も映画の感想より先に「お前、自分の取り分がいっぱい入るようにちゃんと契約しろよ」みたいな話ばっかりしてましたからね(笑)。テリーさんにもさっき製作費を聞かれましたけど、この世代の人はみんな、ほんとにお金の話が好きですよね。