舛添氏を猛追するのが、1月14日に出馬表明した細川護煕氏(76)。全面支援に回る小泉純一郎氏(72)との元総理コンビで、無風状態だった選挙戦を一変させた。2人は「脱原発」で一致し、連携。東京都は原発事故を起こした東京電力の大株主であり、大きな影響力を持っている。
菅義偉官房長官(65)は「5000万円で辞めた人のあとに1億円もらって説明せずに辞めた人というのはどうなのか」と細川氏を牽制したが、まさしくそれが細川氏の泣きどころだ。
細川氏は熊本県知事になる前の82年、佐川急便から1億円を借り入れ、総理在任中の93年に国会で「知事選の裏金ではないのか」と追及された。細川氏は「マンションの購入と自宅の山門、土塀の修理費用に充て、すでに返済した」と弁明したものの、真相をうやむやにしたまま辞任。わずか8カ月で政権を放り出す失態を演じた。
「細川氏は領収書の写しも提示しましたが、佐川急便の社名も押印もないいいかげんなもの。通常、佐川は飛脚マーク入りの領収書を発行しますが、それはコクヨの普通のやつでした。裏金だと白状しているようなものです」(政治部デスク)
実はこの1億円疑惑が発覚する前、森氏は佐川幹部から重大な証言を引き出している。その内容は次のようなものだった。
「佐川清会長(当時)が病気で入院した時、細川氏がカネを借りたいということで秘書を伴って病室を訪ねてきた。そして『私は別荘にある古文書や骨董品も売りました。それでも足りません。だから支援をお願いします』と。佐川会長は5000万円を用意していました。細川氏の日本新党が躍進する93年の衆院選前、運転資金工面のため、党代表としてすがりついたということです。現金は細川氏が用意したカバンにしまわれました。私がそうした場面に同席したのは一度だけですが、別のスタッフも何度か居合わせています。ヤミ献金の総額は恐らく億を超えるのではないか」
そしてもう一つ、カネにまつわる疑惑が存在する。
「98年に突然、議員辞職した背景には『オレンジ共済疑惑』が関係していると言われました」
こう語るのは、政治部デスクである。オレンジ共済といえば、友部達夫元参院議員の政治団体が運営していた共済組合で、これを舞台に90億円もの巨額詐欺事件を起こした友部氏は逮捕、起訴され、00年に懲役10年の実刑判決を受けた。詐欺行為によって集めた資金の一部は政界工作費として流れている。
「当時、細川氏の名前も新聞報道などで登場し、数千万円を受け取った、と言われました。この件についても細川氏は何ら説明していません。当初、細川氏が1月17日に選挙公約を発表する予定がズレ込んだのは、佐川急便とオレンジ共済の件について質問された時の対応がまとまっていないため。事実、菅官房長官は追及する構えでいます」(前出・政治部デスク)
そこへ新たに浮上したのが、「東京五輪辞退」を主張した一件である。
これは昨年末に出版されたジャーナリスト・池上彰氏の著書「池上彰が読む 小泉元首相の『原発ゼロ』宣言」(径書房)で細川氏がインタビューに答え、
〈東京オリンピックだって、安倍さんが『オリンピックは原発問題があるから辞退する』と言ったら、日本に対する世界の評価は、もう格段に違ったものになっていたと思いますよ。(中略)安倍さんには、そう言ってもらいたかった〉
東京五輪開催に反対する人間が都知事になろうというのはいったいどういうことなのか。
「細川氏は舛添氏らに、この件を徹底的に追及されるでしょう」(自民党関係者)
脱原発政策も同様で、
「福島に太陽光発電所を造って東京で買うんでしょうか。細川氏にできることはほとんどありません。ある自民党議員は『もし細川氏が都知事になったら、1年以内にもう1回、知事選をやることになる。必ずまた投げ出すから』と言っていました」(前出・森氏)
舛添氏、細川氏の「自爆スキャンダル」で最有力となるのは田母神俊雄氏(65)、宇都宮健児氏(67)──黒い都知事選にはそんな結末が待っているかもしれない。