芸能

“日本のリバプール”博多スーパースター列伝<第5回>チェッカーズ(1)

20140206m

 博多に次ぐ福岡の音楽発信地、それが「久留米」である。松田聖子、石橋凌、鮎川誠‥‥そして83年にチェッカーズが飛び出した。単にヒット曲が多かっただけでなく、彼らは「チェッカーズ以降」と表現されるほど若者文化を大きく変えた。そこには、一流の仕掛人たちが緻密な戦略を練っていたのである。

「武田鉄矢に聞いたことがあるよ。まだ小学生だった藤井フミヤが下駄をはいて、ライブ喫茶『照和』に演奏を見に来たって」

 福岡・テレビ西日本の事業部で博多発のアーティストを応援してきた藤井伊九蔵が振り返る。あいにく、小学生を招き入れるわけにはいかず、武田たちが帰るように諭したそうだ。

 久留米に住む小学生が向うには、博多という街は決して近くはない。それでも「音楽」に対する無垢な情熱が幼い旅を決意させたようだ。

 やがてフミヤは久留米の街で武内享や高杢禎彦と出会い、80年に「チェッカーズ」を結成。翌81年にはヤマハ主催のLMCジュニア部門で最優秀賞を獲得する。キャニオン・レコード(現ポニーキャニオン)の宣伝部にいた吉田就彦は、ここで目にしたフミヤに強烈な印象を持つ。

「とにかく女の子にモテそうだなって。それと中音域から高音に一気に抜ける声は、いわゆる“売れる声”の響きを感じた」

 いったんデビューの話もあったが、藤井尚之や徳永善也がまだ高校生だったため、晴れて7人が上京したのは83年の春。ヤマハの寮が彼らに与えられた最初の棲み家となった。

 吉田は宣伝から制作に異動になったこともあり、ディレクターとして彼らのデビューに備える。1つの教訓として、やはり福岡出身の陣内孝則がいた「ザ・ロッカーズ」の失敗があった。

「陣内君という素晴らしい個性がありながら、まったく売れなかった。それでチェッカーズを担当する時に、ただ音楽を作るだけではない“仕掛け”が重要と思ったんです」

 ここからプロジェクトチームとしての〈チェッカーズ〉が始動する。サウンド面は作曲家・芹澤廣明や作詞家・売野雅勇を中心に、ビジュアル面はエディターの秋山道男が中心となり、2つのチームが競い合うように作り上げてゆく。

 吉田が所属事務所のヤマハにいくつもの企画書を出すと、かつてヤマハを相手に提案した者はいなかったと言われたそうである。

 基本のコンセプトは、当時、人気があった「シブがき隊」と「横浜銀蠅」のど真ん中をぶち抜くこと。

「片や王道のジャニーズアイドルで、一方は硬派な不良スタイル。その第三極として、イギリスのニューウェーブの波を持つ『明るい不良』という形にしたい」

 とはいえ、フミヤたちが久留米で続けてきたのは、革ジャンにリーゼントのロカビリースタイル。わかりやすく言ってしまえば、アメリカの不良である。

「そのままやったら、銀蠅の二番手になってしまう。いかに自分たちの価値観を高めていくかと説得しました」

 吉田らスタッフは、7人の久留米での活動を全否定していたわけではない。毎週のようにダンスパーティを開いていたというアメリカ映画さながらの青春劇は、むしろ、世の中に伝えていきたいとさえ思った。

 そしてチェッカーズにつけられたキャッチフレーズは〈退屈退治〉という遊び心である──。

◆アサヒ芸能1/28発売(2/6号)より

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    なぜここまで差がついた!? V6・井ノ原快彦がTOKIO・国分太一に下剋上!

    33788

    昨年末のスポーツニュース番組「すぽると!」(フジテレビ系)降板に続いて、朝の情報番組「いっぷく!」(TBS系)も打ち切り決定となったTOKIOの国分太一。今月30日からは同枠で「白熱ライブ ビビット」の総合司会を務めることになり、心機一転再…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<寒暖差アレルギー>花粉症との違いは?自律神経の乱れが原因

    332686

    風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水が出る‥‥それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー」かもしれない。これは約7度以上の気温差が刺激となって引き起こされるアレルギー症状。「アレルギー」の名は付くが、花粉やハウスダスト、食品など特定のアレルゲンが引…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<花粉症>効果が出るのは1~2週間後 早めにステロイド点鼻薬を!

    332096

    花粉の季節が近づいてきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は全国的に要注意レベルとなることが予測されている。「花粉症」は、花粉の飛散が本格的に始まる前に対策を打ち、症状の緩和に努めることがポイントだ。というのも、薬の効果が出始めるまでには一定…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
上原浩治の言う通りだった!「佐々木朗希メジャーではダメ」な大荒れ投球と降板後の態度
2
エスコンフィールドに「駐車場確保が無理すぎる」新たな問題発覚!試合以外のイベントでも恨み節
3
これも「ラヴィット!」効果…TBS田村真子アナ「中日×巨人で始球式」に続く「次に登板するアナウンサー」
4
【高校野球】全国制覇直後に解任された習志野高校監督の「口の悪さ」/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」
5
日本人に大打撃!タイ政府「外国人締め出し」で長期滞在とビザ取得が困難に…そして口座凍結まで