芸能

“日本のリバプール”博多スーパースター列伝<第5回>チェッカーズ(3)

20140206o

 売野はメンバーの1人1人が、芹澤の厳しい指導を受けた場面をたびたび見ている。

「メンバーは皆、芹澤先生と呼んでいたし、ギターだけじゃなくドラムでも『ここはこうやって叩け』と手取り足取りでした」

 売野は2曲目の「涙のリクエスト」(84年1月)、3曲目の「哀しくてジェラシー」(84年5月)、4曲目の「星屑のステージ」(84年8月)までをデビュー前の段階で芹澤と完成させている。そして「涙のリクエスト」は、発売前の段階から手応えが違った。

「ライブハウスで演奏すると、異様に盛り上がっていた。芹澤さんと『これは当たる』と言い合ったね」

 実際、発売からすぐに火がつき、さらには不発のデビュー曲まで引っ張り上げられ、3曲目も含めて「3作同時ベストテン入り」という快挙も達成する。

 これだけ当たった「涙のリクエスト」だが、売野の詞が1時間45分、芹澤の曲が15分で、2人合わせてわずか2時間の早業である。4作目の「星屑のステージ」も同様の速さだが、この曲を下敷きにして吉幾三は「酒よ」というヒット作に転換。ともすればパクリ疑惑になりそうだが、むしろ芹澤は「名誉なこと」と喜んでいたという。

 それでも5作目の「ジュリアに傷心〈ハートブレイク〉」(84年11月)は、売野が5度の書き直しを命じられるほど“難産”となった。

「ちょうどこの曲でチェッカーズがヤマハを離れ、自分たちの個人事務所を作った。その1作目だから芹澤さんも気合いが入っていましたね」

 立て続けにチェッカーズはチャートの1位記録を重ね、街には同じようなファッションに身を包んだ若者があふれた。男の子たちが初めて「オシャレ」に目覚めた瞬間である。

 それでも彼ら自身は気取ることなく、テレビでは7人が久留米なまりで楽しげに話している。ディレクターの吉田は、いつも「アイドルでも100%、ミュージシャンでも100%であれ」と要求した。

「3カ月に1枚のシングルをリリースし、個々に楽器の練習も曲作りも手を抜かずにやれと言っていました。大変なスケジュールだったけど、そこは九州男児だから誰も音を上げない。いや、彼ら自体が自分たちの活動が楽しくて仕方がなかったんだと思う」

 チェッカーズとしての活動は約10年に及び、以来、再結成待望論も実現する気配はない。それでも「郷土愛」は、フミヤを筆頭に不変であるらしい。

 TNCを退職して広告業に関わった藤井伊九蔵は、09年に久留米駅にできた高層マンションのCMをフミヤに依頼したことがある。

「二つ返事でOKでしたよ。出演だけじゃなく、実際、親のためにと最上階を購入してくれましたから」

 郷土愛とファンへの思いを表すなら、やはり「チェッカーズ」の6文字こそがふさわしい──。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    なぜここまで差がついた!? V6・井ノ原快彦がTOKIO・国分太一に下剋上!

    33788

    昨年末のスポーツニュース番組「すぽると!」(フジテレビ系)降板に続いて、朝の情報番組「いっぷく!」(TBS系)も打ち切り決定となったTOKIOの国分太一。今月30日からは同枠で「白熱ライブ ビビット」の総合司会を務めることになり、心機一転再…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<寒暖差アレルギー>花粉症との違いは?自律神経の乱れが原因

    332686

    風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水が出る‥‥それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー」かもしれない。これは約7度以上の気温差が刺激となって引き起こされるアレルギー症状。「アレルギー」の名は付くが、花粉やハウスダスト、食品など特定のアレルゲンが引…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<花粉症>効果が出るのは1~2週間後 早めにステロイド点鼻薬を!

    332096

    花粉の季節が近づいてきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は全国的に要注意レベルとなることが予測されている。「花粉症」は、花粉の飛散が本格的に始まる前に対策を打ち、症状の緩和に努めることがポイントだ。というのも、薬の効果が出始めるまでには一定…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
上原浩治の言う通りだった!「佐々木朗希メジャーではダメ」な大荒れ投球と降板後の態度
2
フジテレビ第三者委員会の「ヒアリングを拒否」した「中居正広と懇意のタレントU氏」の素性
3
3連覇どころかまさかのJ2転落が!ヴィッセル神戸の「目玉補強失敗」悲しい舞台裏
4
ミャンマー震源から1000キロのバンコクで「高層ビル倒壊」どのタワマンが崩れるかは運次第という「長周期地震動」
5
巨人「甲斐拓也にあって大城卓三にないもの」高木豊がズバリ指摘した「投手へのリアクション」