宮崎では今、選手より臨時コーチ・松井秀喜氏(39)の話題一色である。古巣・巨人は元スター選手をどうしても連れ戻したい。しかしゴジラの心はかつてのように、また海を渡っているというではないか──。
「12年ぶりに宮崎に戻ってまいりました」
1月31日、宮崎空港に降り立った松井氏がこう口を開くと、約800人のファンが歓声を上げた。
昨年日本一を逃した巨人は、ヤンキース時代に「ワールドシリーズMVP」獲得まで成し遂げた、松井氏の指導で選手たちが奮起する姿に期待したいところだ。
「でも、あまり松井自身はやる気ないみたいでしたね。臨時コーチ就任が決まってから阿部と会話した際、松井がキャンプで日々の“出勤時刻”について『何時に行ったらいいかな?』と聞いたら、阿部が『早く来てくださいよ』と答えました。ところが松井は『昼までに行けばいいんだろ』と、面倒くさがるように返したそうです」(巨人番記者)
それでも巨人は、松井を古巣に帰還させようと躍起になっている。
1月10日、渡辺恒雄会長(87)、長嶋茂雄終身名誉監督(77)も同席した都内での会談で、巨人の白石興二郎オーナー(67)が松井氏に、
「巨人は両手を開いて待っているよ」
と、将来的な監督要請を行ったという。
つまり今回、松井氏が臨時コーチとして活動する2月1日から13日までの期間は、巨人にとってその第一歩という位置づけであろう。
一方、松井氏は巨人のキャンプが終われば、2月中旬に米フロリダ州タンパで行われる、ヤ軍のキャンプでも臨時コーチを務めることが濃厚なのである。
「打撃技術のみならず、チームプレーが優先できる松井をヤ軍は指導者として高く評価し、実際に声をかけているんです」(メジャー担当記者)
日米で「松井争奪戦」が勃発する中、渦中のヤ軍に田中将大(25)が入団している。この交渉過程においてヤ軍は松井氏のビデオ・メッセージを用意し、田中の入団を後押しするために見せたことが報じられた。
なんと、この報道に巨人サイドがピリピリしていたというのだ。
「フロントの幹部が青ざめたといいます。田中入団に関する話題で、わざわざ関係のない“松井が協力した”という交渉内容の細部まで伝えてきたことで、ヤンキースが“ライバル”の自分たちに牽制球を投げてきたのでは、と過敏に反応したようです」(スポーツライター)
とはいえ、松井氏が退団後もヤ軍と良好な関係を築き、戦力アップのために協力を惜しまなかったのは事実である。それでも巨人にしてみれば、宮崎で松井氏の気持ちを自軍に引き寄せたい。
「巨人・松井」の復活を宣伝するかのように、球団は背番号「55」のユニホームも用意したのだ。
ところが、現在の松井氏の思いは違うという。
「松井はきっぱり、『臨時コーチですから』と話していて、宮崎で55番のユニホームを着用する意思を持っていませんね。昨年5月、長嶋氏とともに国民栄誉賞を授与された際に着用したユニホームも、授与式後にプレゼントされていますが、『自宅でタンスの奥に眠っている』と、本人が話していました。一方のタンパでは55番を背負うでしょう。過去にも歴々のヤ軍OBたちは現役時代の背番号で臨時コーチを務めてきましたからね」(球界関係者)
どうやら、ヤ軍の完封勝利のようである。