1月22日、ポスティングシステムでのメジャー移籍を希望していた、楽天・田中将大がついにヤ軍との契約合意に達した。超破格の待遇で名門球団に入団した日本のエースを、ストレスをため込んだかつてのスーパースターが待ち受ける。
制度上の問題から決まるまでには紆余曲折あったが、いざ契約が成立してみれば、まだメジャーのマウンドで1球も投げていない投手が、ヤ軍と7年総額1億5500万ドル(約163億円)、年平均23億円以上という多大な評価を勝ち取った。
一方、ヤ軍はこの出費によってチーム総年俸が1億8900万ドル(約198億円)を超えてしまい、このままではルールにより約29億円の贅沢税を支払うことになる。このため、ヤ軍が高年俸の“不良債権”を切ることは当然の流れと言えるだろう。
そのヤ軍で今、半ば「邪魔者」扱いされているのがなんと、イチロー(40)なのだという。
「オフにエルズベリー、ベルトランと大型契約を結んだヤンキースで、イチローは外野手の5番手になり下がりました。1番打者としても昨年、ついに出塁率がメジャーで初めて3割を切った。球団はリードオフマンとして、出塁率がはるかに上のガードナーを使う方針を固めていますから、放出されてもしかたのない境遇。しかし、イチローは1年平均約6億5000万円の2年契約という、控え選手には見合わない高給取りですから、ヤ軍が年俸の一部を負担して、やっと相手球団が獲得に乗り出すかどうか」(メジャー特派員)
高給取りと言われつつ、はるか後輩の田中が新人でありながら破格の扱いで入団してくる。しかも、すでに因縁が発生しているというのだ。
「イチローにしてみたら、不要なら早く放出してほしかった。しかしフロントは、田中の獲得にかかりきりでした。田中のポスティング決着が遅れたことで、他のFA選手らの動向が決まるのも遅れた。特にイチローは宙ぶらりんで放っておかれました。これは、田中獲りに失敗した際、将来性のある若手投手を獲得する交換要員にするつもりだったからです。こうした話はエージェントから情報が入り、イチローのプライドはズタズタ。ブチギレまくっていたそうです」(前出・メジャー特派員)
ただでさえ緊張感の漂うメジャー1年目、田中は屈辱にまみれてイライラが募ったイチローのもとに飛び込むこととなる。
しかも、イチローが嫌悪する、“うるさい大勢のマスコミ”を引き連れてのNY入りとなるだろう。
「NYではそうした姿を見せてはいないようですが、マリナーズ時代のイチローはまさに“王様”でした。記者に背を向けて受け答えしたり、特定の記者だけの質問しか受け付けなかったりで、報道陣は機嫌をうかがうしかなかった。そんなイチローもNYでは猫をかぶっているわけですが、これまでは現地の日本人記者はイチロー担当だけでしたからプライドを保てた。ところがこれからは、田中担当が幅を利かせてムードも激変するわけですから、ピリピリするでしょうね」(メジャー中継関係者)
くしくも田中は、イチローとは“犬猿の仲”と言われる松井に背中を押される形でヤ軍入りを果たした。
「それもイチローはおもしろくないでしょう。田中は『松井さんのようになりたい』と言っているようですが、松井から直接、電話でアドバイスをもらっていました。それは松井がヤ軍から頼まれてしていたみたいですね」(現地ジャーナリスト)
何やらイチローだけ蚊帳の外のような構図だが、その逆襲にも大いに注目が集まる。一方で、田中への期待も青天井で高い。とてつもなく厳しい戦いがスタートするのである。