スポーツ紙デスクが言う。
「イチローのモチベーションはヒットを量産することにあり、メジャーの野球殿堂入りしたいという野望、悲願があるのです」
殿堂入りの資格を持つのは、メジャーで10年以上プレーし、引退後5年以上が経過した選手。投票権を持つのは、全米野球記者協会に10年以上所属した記者である。
「殿堂入りのためには、メジャー通算3000安打が必要だとされています。まずそれを達成し、殿堂入り資格発生1年目での殿堂入りを実現したいと思っている」(メジャーを取材するジャーナリスト)
先の「プロスペクタス」によれば、3000安打達成は17年だが、それはあくまでコンピュータの予想。あの数字であと3年も本当に現役を続けていられるかどうかはわからない。
不安を少しでも払拭する意味もあるのか、イチローは悲願に向けて、ある「一手」を繰り出している。
「殿堂へのゴマスリのような行動です。まず、殿堂博物館が出している機関誌に、コラムを寄稿しました。記録に関する展示用のバットやグローブはもちろん寄贈していますが、殿堂を訪れた際、サイン入りのバットやグローブを持参し、『これは陳列用ではありませんよ』と言って館長にプレゼント攻勢をかける。喜んだ館長はイチローの虜、ファンとなり、完全に取り込まれてしまいました。館長が投票権を持っているわけではありませんが、殿堂入り候補選手の実績を書いた資料を作るのは殿堂であり、館長は投票権のある記者と話す機会もある。間接的に影響することはあるかもしれません」(米スポーツメディア関係者)
いわば個人的な「おみやげ」をせっせと贈っているようなものだが、「世界のイチロー」にしては、何だかセコすぎはしないか。
こうした工作活動が奏功するのかというと、
「アメリカの記者はイチローを評価していません。相変わらずマスコミ対応が悪い、裸の王様だからです」
と顔をしかめるのは、メジャーを取材するジャーナリストである。
「すっかり大物になったイチローは、日本のメディアに対しては、個人的に親しい記者の代表質問しか受け付けません。アメリカ人記者が何か聞こうとしても、背を向けた状態でグローブの手入れをしながら『あぁ、そう』などと嫌そうに言う。日米どちらのメディアにも同じように答えた黒田博樹(前ヤンキース、現広島)とは雲泥の差です。イチローの取材拒否に煮え湯を飲まされているアメリカ人記者は数多く存在し、大半が『(殿堂入り資格発生)1年目のイチローには投票しない』と話している。かつてイチローが所属したマリナーズの本拠地、シアトルの記者も皆、『絶対に投票しない』と断言するほどです」
人間性への疑問が、館長へのプレゼント攻勢というせっかくの工作を打ち消してしまう。たとえ3000安打に達しても、その先の悲願達成には大きな「敵」がいることを、イチローははたして認識しているのか。