「ミスタータイガース」こと、掛布雅之氏が獲った本塁打王のタイトルは3回。1979年、82年、84年である。最後の84年は、中日の宇野勝氏と37本で分け合う形となったのだが、宇野氏優勢で迎えたこの年の終盤戦で、ある当時の名選手の言葉から奮い立ち、「37本打てたのだ」と掛布氏が振り返っている。元巨人・江川卓氏のYouTubeチャンネル〈江川卓のたかされ【江川卓 公式チャンネル】〉の、2月11日付け投稿回でのことだ。
掛布氏いわく、宇野氏が37本塁打を放ったころは掛布氏はまだ33本ほどで、残りが6、7試合だったそうだ。そこで、この年の打率は3割を切っており、残り全打席本塁打狙いに切り替えたと言う掛布氏。
すると「ミスター赤ヘル」こと山本浩二氏から、
「オレは今年はもう無理だ。でも宇野に、タイトルを獲る難しさは教えてあげなあかんで!」
と、ハッパをかけられたことを振り返った掛布氏。山本氏も本塁打王4回と、セ・リーグでは掛布氏と交互に獲りあう時期もあった。
その後、掛布氏は4試合連続で本塁打を放ち、37本に追いついた際、「“ヤッター!”って言ったのは、浩二さんとの約束守れたから。自分に対しての喜びじゃないの!」と、つい昨日のように笑みを浮かべ振り返ったのだった。
しかしこの年、129試合目がナゴヤ球場、130試合目が甲子園球場であったことから、掛布、宇野の両氏は全10打席ともに敬遠されており、本塁打王以上に注目を浴びることにもなった。
「悪しき勲章」とも回顧した掛布氏だが、宇野氏に本塁打王の難しさを教えたのは間違いないだろう。
(ユーチューブライター・所ひで)