テリー やっぱり師匠がスゴいのは、ずっとお金が大好きなことですよね。もう何十年も前に、最初にお会いした時に目標を伺ったら「去年の年収を超えること」って。
木久扇 そうそう。「先月の売り上げより今月。今月より来月」っていう気持ちがありまして。
テリー 普通はウソでも「芸を磨きたい」とか言うじゃないですか。
木久扇 新しく「笑点」のメンバーに桂宮治さんが加わりましたよね。彼はずっと化粧品のセールスをやって、月の売り上げが1000万円で、成績が1位だったそうなんです。僕はそれを堂々と言う彼も偉いと思うし、変な話、宮治さんの容貌を見て化粧品を買おうとは思わないですよね(笑)。
テリー たしかに(笑)。
木久扇 それを話術でねじ伏せて、余計なものまで買わせちゃうという手腕を持っていて。だから、力のあるいいメンバーが入ってきてくれたなと。これから「笑点」にもうひと波、来ると思います。
テリー 師匠も元は会社勤めされてたから。宮治さんも似たところがあるのかもしれないですね。
木久扇 「笑点」がパワーアップすれば、仕事も入金も増えるし(笑)。やっぱり入金なんですよね。
テリー 売り上げグラフが右肩上がりになってないと。
木久扇 今、落語の窓口って「笑点」しかないんですよ。もうラジオ番組もないし、テレビでも落語を主体とした番組はないんです。だけど、落語家っていうものがいて、ずっとやっていかなくちゃいけないから、それは大事なんですよね。
テリー 卒業という形になった林家三平さんはどうだったんですか。自ら「力不足だった」みたいなコメントをされてましたけど。
木久扇 隣の席でしたし、僕はお父さんにずいぶんお世話になってテレビに出られるようになった人間ですから恩もあるし、彼にはすごく興味があったんですけどね。ただ、やり方を見ていて、若いのにいつも頭の挨拶が家のことばっかりなんですね。お母さんがどうのとか、お父さんの「どうもスイマセン」とか。
テリー あぁ。
木久扇 それがとっても気になって、彼に言ったことがあるんです。例えば、大谷翔平とかトランプ大統領とか、もっと別の話題をおもしろおかしく小咄や枕にしたらどうかって。
テリー もうちょっと他に目を向けてね。
木久扇 例えば、コロナもあんまり笑いにできないんですけど、僕は「転んでないのにコロナとはこれ如何に。感染してないのに新幹線というが如し」なんてやってたんですよ。お客さんを惹きつけるには、こういう挨拶が大事なんですけどね。
テリー さすがだなぁ。
木久扇 三平さんはすごく育ちがいいから守られてるほうが多かったと思うんです。突き抜けていくよりも。そこが彼の力が立たなかった理由だと思うんですね。
テリー 難しいですよね、お父さんが偉大すぎると。僕、(父親の)三平さんが最後に出た番組の演出をやらせてもらったんですけど、スゴかったですよ。喫茶店で打ち合わせをしたんですけど、僕の話なんか全然聞いてくれなくて、向こうの席のお姉さんを笑わせに行っちゃうんです。ああいうパワーは、やっぱり天才だなと思いますよね。
木久扇 そうですね。そういう人といつも比べられるんですから、二代目の三平さんもツラいでしょうね。