テリー 今、落語家さんになりたい人って、増えているんですか?
好楽 ええ、多いですね。それこそ最近は、大学を出て働いて所帯持って、離婚して仕事を辞めて、それから噺家を目指す、なんて人も少なくないんですよ。
テリー えっ、そんな状況なんですか?
好楽 昔は年齢制限がなかったんですが、最近はそんな感じなので、「落語協会」「(落語)芸術協会」では、弟子入りの年齢制限が厳しくなったんです。
テリー 師匠のところのお弟子さんは、何人いらっしゃいますか?
好楽 弟子10人と孫弟子3人です。今は家に住み込んで修業するような内弟子はいなくて、みんな「通い」です。
テリー でも、落語の修業って本当に大変ですよね。だって、「笑い」は本当の意味で継ぐことはできないでしょう?
好楽 あ、それはほとんど無理なことです。「笑い」は、一生懸命苦労しながら、自分の口調、テンポをものにしていかないといけませんから。
テリー 師匠のマネだけをしていたら単なるコピーだから、「だったら師匠の落語を聴くよ」ってことですものね。
好楽 ええ。師匠がお手本になるのはもちろんですけど、そこからどう自分の個性を出して、抜け出していくかを勉強するんですね。だから、落語家はみんな一匹狼なんですよ。
テリー なるほどねェ。
好楽 歌丸師匠なんてすごいですよ。ずっと新作をメインでやっていたのに、好きな古典落語を勉強して独演会をやり始めたら、連日満員になっちゃって。だから「笑点」を辞めたのに、今はもっと忙しくなっているんです。
テリー 年を取ってからさらに芸が輝くんだから、大したものですねェ。
好楽 歌丸師匠は、どんどん前に進んでいますよ。もう17年の演目も考えているらしいですからね。
テリー すばらしいな。好楽師匠は、今後どんなことに力を入れていきますか?
好楽 5年前に弟子たちや後輩を育てるために、自宅の1階を改造して「池之端しのぶ亭」という寄席を作ったんですよ。
テリー すごい、さすがは「笑点」成金!
好楽 いやいや、ものすごく狭いんですけど(笑)。
テリー その寄席は、ふだんから営業されているんですか?
好楽 やっていますよ。若い人が勉強会を開いたりして、年中使ってもらってます。やっぱり噺家は客前でしゃべることが大事ですからね。昔から「壁に向かって100回稽古」なんて言いますけど、100回しゃべったって壁は何も言ってくれないから(笑)。時々「笑点」メンバーも出てくれるんですよ。
テリー 確かに。人と対する緊張感があるとないとでは、全然違いますからね。でも、ぶっちゃけ、儲かってはないでしょう?
好楽 儲かりませんねェ(苦笑)。でもね、談志師匠、先代の三平師匠ほか、尊敬する先輩方がいなくなってしまいましたから、もうあたしたちの世代が若手を育てるしかないじゃないですか。
テリー なるほど、次は自分たちの番だと。
好楽 これは「恩返し」なんです。あたしみたいな、いいかげんな噺家がここまで来られたのは、先輩や師匠のおかげですから、少しでもその思いを引き継いでいきたいんですよ。
テリー くー、笑いのあとに泣かせるなんて、師匠のトークもまるで落語じゃないですか。おみごと!
◆テリーからひと言
さすが、70歳になっても師匠はパワフルだね。元気のないお年寄りが増えているから、「笑点」メンバーはまさに希望の星。いつまでもテレビからパワーを日本中に送ってください。