芸能

テリー伊藤対談「林家木久扇」(2)師匠はまるで“寅さん”のよう

20141106p

テリー 治療中は、あまり声を出しちゃダメっていう制約があったんですか?

木久扇 声は出そうと思っても、もう全然出なかったんです。だから口パクで「せ・ん・せ・い、い・つ・ご・ろ・出・る・ん・で・す・か」みたいな。

テリー 先生は何と?

木久扇 「僕たちはいつ声が出るかっていうことで治療しているんじゃないから、個人差もあるし、時期は申し上げられません」って。

テリー 意外に冷たい感じですね。

木久扇 具体的な時期を言って、外れても大変ですからねぇ。それで、家族もお弟子さんも、私にふだん声を出させるとよくないと思って、ほとんど話しかけてくれないんです。ずーっと黙っているのって大変ですよ。

テリー しゃべることが商売ですもんね。

木久扇 それで治療が終わったのが9月の4日だったかな。でも、まだ声は出なかったんですよ。

テリー それは焦りますね。

木久扇 恐怖ですよ。失敗かな、放射線の当てすぎかなとか。毎日毎日、起きた時に「アー」ってやってみるけど、本当に声が出ませんから。悲しかったですね。それでも日テレの「メレンゲの気持ち」という番組に出てくれって言われて。ところが収録前日になっても、声が出ないんですよ。

テリー そんな状況でオファーする「メレンゲ」もすごいねえ。

木久扇 プロデューサーが「笑点」と同じ人で、“回復第1回目”で出てくれっていうんです。

テリー ああ、なるほど。

木久扇 結局、声が出ないから、うちの木久蔵を連れていって「父親はこんなことを言おうとしてるんですよ」って通訳させて、漫才みたいにしようかなと思ったんです。そしたらその朝、「お父さん、いつまでも寝てるんじゃないのよ。今日、テレビでしょ」と言われて「そうだね」って‥‥「あら、声が出た!」。その日初めて、声が出たんです。

テリー あらら。じゃあ「メレンゲ」のおかげってこともあったんだ。ご家族にも支えられたでしょう。

木久扇 ところがせがれは、「お父さん、夏休み、家族でハワイに行っていい? もう予約して、交通費も払っちゃった」って。「人が具合悪いのに、ハワイに一家で行って楽しむなんて、どうしてそういうことが考えられるんだ」って思ったけど、能天気だから行っちゃって。ハワイからの便りで「こちらのパワースポットで、日本のお父さんの病気が治るように祈願しました」って。

テリー 勝手なこと言ってますね(笑)。

木久扇 ハワイの神様だって忙しくなるし、あきれ返っちゃう。今度会ったら文句を言ってやってください。

テリー ハハハ。師匠は自分の出てない「笑点」を見て、どう思いましたか。

木久扇 やっぱり僕が出てないから、ギャラの入金がないしねぇ。出てるやつはちゃんと出演料をもらっているから、悔しいなあと思ってね。僕は在庫みたいな気持ちでいましたね。

テリー やっぱり「笑点」は、師匠がいないとつまんないね。師匠は、おもしろくないことをたくさん言ってくれるじゃないですか。あれが必要ですね。

木久扇 あ、そうですか、つまんないことをね(笑)。

テリー よくトチったり。

木久扇 セリフが言えなかったりね。

テリー 師匠のあの感じがないと、日本の日曜の夕方はないね。

木久扇 ずいぶん大げさな(笑)。

テリー いや、本当にそう思った。師匠は「寅さん」と一緒なんですよ。師匠みたいな人がいないと日本がホッとしない。

木久扇 ありがとうございます。やっぱりいい答えばっかりが並んでいると、それはそれでいいんだけど、どこかで崩して、間延びしたり、失敗したりして、見てる人が「なあんだ、俺たちより下手なことを言ってんじゃねえか」っていうようなことで終わるのもいいんじゃないか。いつもちゃんとちゃんとじゃ、見ててつまんねえなと思って。

テリー 師匠にとって「笑点」というのはどんな存在ですか。

木久扇 僕のライフワークですね。大喜利というのは昔からあったんですが、談志師匠が座布団を渡したり取ったりというのを考えられて、あれがすばらしいアイデアですね。昔、牢屋に牢名主というのがいて。

テリー ああ、畳を積み重ねた上に座ってた。

木久扇 あれで成功したと思うんですよ。ただ正座して、みんながおもしろいことを言って、顔に墨塗ったりするぐらいじゃつまらない。片一方はこんなに座布団があって、片一方はないと。階級の差別みたいなのがあって、来週はどうするんだろうってつなげるうまさですね。

テリー 座布団の数を競いながらやってるという。

木久扇 それから、僕は黄色い着物を着て「黄色いお兄ちゃん」と言われてるんですけど、「笑点」が白黒からカラーになった時、プロデューサーが着物を用意して「好きな色を取りな」って言うんで、黄色はいちばん最初に目に入る色だから取ったんです。

テリー 師匠の持ち物は、だから黄色が多いんだ。

木久扇 今では成人式の時、呉服屋さんに黄色い紋付を作ってくれとか、青い紋付を作ってくれとか、カラーが普通になっちゃったそうです。昔は黒一色だったんですけどね。

テリー 若い人の着物の感覚まで変えたわけだ。でも笑点は本当にお化け番組ですよね。10月5日放送分では、視聴率20%を超えたというニュースがありましたけど。そんな番組、他になかなかないですよ。

木久扇 66年から始まって、今年で48年ですからね。同じことをやってるんですよ。司会者が出題して、答えてって。予算もあんまりかかってないしね。

テリー でも、ギャラがいいでしょ?

木久扇 それほどじゃないんですよ(笑)。でも「紅白歌合戦」に出る歌手と一緒ですね。笑点で知名度をつけて、全国を回って取り戻すっていう。

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