テリー 本の中の「私が出会った偉大なバカ」という章では、仲が良かった横山やすしさんについても書かれてますね。
木久扇 やすしさんは「やすきよ」がフジテレビの大喜利の番組の司会になって、僕も出てたんですよね。その時にやすしさんがポツンと1人で外を見てたんで、「どうですか、東京は」って聞いたら、「わしな、東京に友達がおらんのや。おもろないで」って言うから、「そうですか。僕、林家木久蔵ですけど、東京に出ていらしたらご連絡ください」ってメモを渡したんですよ。そしたらある時、夜の10時過ぎぐらいに「こらぁ、木久蔵か!」って電話がかかってきたんですよね。
テリー うわぁ、厄介だなぁ。それはかなり酔ってるんですか。
木久扇 ええ。で、「今すぐ出てこんかい、六本木や」って言うんですよ。
テリー 師匠はどこにいたんですか。
木久扇 三鷹の自宅です。
テリー じゃあ、六本木まですごく遠い。
木久扇 だから「もう遅いし、明日早いから、行かれないんですよ」って切ったんです。そしたら11時過ぎぐらいでしたかね、外から「ここや、ここ!」って声が聞こえるんですよ。でも、家族で「出ないようにしよう」って相談して、家の中でソーッとしてたんです。
テリー もうホラーじゃないですか(笑)。
木久扇 そしたら、前のお宅から「もしもし。なんか今、小さい男性が塀を乗り越えていきましたけど、警察に通報しましょうか」って電話が来たんですよ。でも、それは「いや、いいんです。知り合いだと思いますから」って切って。
テリー 大変だな(笑)。
木久扇 そしたら、やすしさんがうちの物干し竿を「落語の名人、木久蔵はーん。コラッ、起きてこんかい。木久蔵はんたら木久蔵はん」て叩き始めたんですよ。しょうがないからちょっとだけ窓を開けたら「コラッ、おるやないか!」って言われて、六本木に連れていかれたんです。
テリー やすしさんはそういう逸話がゴロゴロしてますよね。
木久扇 あの人は飲みに行っても全然お金を払わないんですよ。で、店にいる客とすぐにケンカするんです。それで、よく僕が代わりに謝ったり、お金も払いに行きましたね。だから、やすしさんが亡くなった時も「生きてるうちにさんざんお世話したから、もういいや」と思って、大阪へは行かなかったんです(笑)。
テリー 他にも笑点メンバーはもちろん、四代目三遊亭小圓遊さんとか、こういうバカ話が本にはたくさん書かれてますね。
木久扇 こんな話なら一晩中でも話せますよ。僕もバカですから、バカな人って全然嫌いじゃないんですよね、みんな個性があって。それぞれの生き様がありますけど、均一に思わないで、何でも柔らかく受け取っていくべきだと思うんですよね。
テリー 師匠って、実はすごく記憶力もいいし、優秀じゃないですか。その優秀な部分とバカを演じてる部分は、どういうバランスになってるんですか。
木久扇 いや、バランスとか、そんな計算はしてないんですけど、ただ直情径行でして。それで、ラーメンで大損したりするんですよ。わざとバカをしようとしてるわけじゃなくて、そういう状況に自分からどんどん入っていっちゃう。だから、我ながらバカだなぁと(笑)。これはもう一生治らないですよね。
◆テリーからひと言
いつまでもお金大好きで最高だな。これからもお元気で、たくさん稼いでくださいよ。