病院嫌いの人ならわかると思うのですが、医者にかかると何をされるかわからない。そんな不安があったのですが、エラーを起こしたロボコップのような体の“錆び加減”には勝てないわけですよ。よろよろとおぼつかない足取りで近くの病院へ…。
救急の窓口で話をするんですが、向こうが言っている意味を脳みそで咀嚼、嚥下することができない。「とにかく、変なんです」という「このおじさん、変なんです」にも聞こえる“石野ようこ言葉”で事情を話します。
「とりあえず、先生に診てもらいましょう」と言う、夜勤明けで早く帰宅したい感がありありの職員さんに案内され、診察室前へと向かいます。利き腕ではない、右腕の関節部にぶっとい針を刺して血液検査。ソファに座って順番を待ちます。
しばらくまどろんでいると、艶系ビデオの企画物にでも出てきそうな少し妖艶に見える看護師さんのうら若き「丸野さーん」の声に反応。おっ、男優の出番だな…と、激痛が走る節々を無理に動かし、メトロームのように左右にフラフラしながら診察室へ。
そこには、目が大きな美人の女医が待ち受けていました。おやおや、こりゃいよいよマッパにならないと…と思っていると、衝撃の宣告。
「うん、うん、丸野さんね。γ-GTPが2000超で測定不能です。驚いたわ。よく生きてるよね、大丈夫? たぶん、もっとすごい数値になってると思う。初めて見たわ」
何年も消化器内科で患者を診てきた美人女医が、「未知との遭遇」を果たしたような口ぶり。あらら、スピルバーグでももうちょっと、オブラートに包むぜ、先生!
「これは、即入院しないとダメね。膵臓もダメだし、肝臓もダメ、糖も出てるし、三重苦」
まさかの三重苦宣言。関白宣言のさだまさしでももうちょいとオブラートに包むぜ、先生。
ここで緊急入院が決定したわけですが、病棟でも、ひと悶着あるわけです…。
(この項続く)=不定期連載=
丸野裕行(まるの・ひろゆき):ライター、脚本家、特殊犯罪アナリスト。1976年、京都市生まれ。フリーライターを生業としながら、求人広告制作会社のコピーライター、各企業の宣伝広告などを担当。ポータルサイト・ガジェット通信では連載を持ち、独自の視点の記事を執筆するほか、原作者として遠藤憲一主演の映画「木屋町DARUMA」を製作。文化人タレントとしてテレビなどにもたびたび出演している。