社会

「γ-GTP2500超!」酒好きライターの肝臓病“地獄の体験記”(7)「お猪口でお茶を楽しむ肝炎の猛者」

 体調不良になって、数日は何もする気が起こらない。ただなんとなく、「絶メシロード」(テレビ東京系)をぼんやり眺めながら過ごします。そんなまどろみの中、病室の外で何やら騒ぐ婆さんがひとり。耳をすませば、どうやらトイレに連れて行ってほしいらしい。しかも、自分の娘と勘違いをしている女性看護師さんに食ってかかっている。おやおや、こりゃ大変だ。

 しかし看護師さん、「私は娘じゃないよ」と言ってのけるわけですよ。年寄り相手にご無体な…。でも、その騒ぎぶりは尋常ではなく、病棟の端から端まで響き渡っている。そこに便乗したのか、次は爺さん。「俺は家に帰る!」と5歳の子供がトイザらスで「このオモチャ買ってよ!」というレベルの駄々っ子ぶり。

 戦中派ではないから、我慢が足りないのかな?同室の肝硬変の紳士がこちらの怪訝な顔に反応して、「いつもあんな感じなんですよ。看護師さんもあきらめモードでね…」。そうポツリとつぶやいたこの紳士は、肝不全で腹水が溜まったらしく、それを抜く措置をしないといけないようでした。いい人柄と腹水が溜まるのは比例しないということですね。

 その紳士は日本酒がお好みだそうで、昔から浴びるほど飲んだらしく、筆者と同じく極度のストレス持ちのようでした。「みんなから強い人間だと思われているけど、誰もわかってくれないものですよね」。確かにまったく同感です。その口ぶりにはペーソスが満ち満ちていました。

 さて、やっと膵臓病・肝臓病食を摂れる元気が出てきたので、全粥と病院食らしいおかずをいただきます。その日は、語源がよくわからない「松風焼き」「ゆで野菜」「辛子和え」「刺身こんにゃくと減塩醤油」。でもね、これが意外においしい。ヘルシーなんですが、味はしっかり目。談話室では、高齢者が看護師さんに「あーん」して食べさせてもらってまして、食事の時だけは幸せそう。

 しかし、あの看護師さんを娘だと思っている婆さんは「おいしいやろ?私が作ったご飯おいしいやろ?」と、どこまで勘違いしているのか…。まるで、「私が歴史を作った」ような物言いです。

 無事に夕食を終え、病室のカーテンから垣間見えたのは、無駄口が多いあの肝炎のHさん。彼はうまそうにお猪口でお茶をあおっていました。刺身こんにゃくをアテにお茶をグビリ。その「たまらない」という表情、こんな幸せ者がいるのかと少しうらやましく思ってしまいました。

(この項続く)=不定期連載=

丸野裕行(まるの・ひろゆき):ライター、脚本家、特殊犯罪アナリスト。1976年、京都市生まれ。フリーライターを生業としながら、求人広告制作会社のコピーライター、各企業の宣伝広告などを担当。ポータルサイト・ガジェット通信では連載を持ち、独自の視点の記事を執筆するほか、原作者として遠藤憲一主演の映画「木屋町DARUMA」を製作。文化人タレントとしてテレビなどにもたびたび出演している。

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