片脚をピンと伸ばし、高々と上げたままクルクル回る「キャンドルスピン」を武器に、15歳の小悪魔も優勝候補に名乗りを上げた。ところが、地元開催で多くの声援を浴びるロシアの美少女ユリア・リプニツカヤに、やはり韓国メディアは黙っていられないようだ。
浅田が転倒した団体戦で、みごとに金メダルを獲得したロシアの原動力は、ショートとフリーで合計214.41点をマークしたリプニツカヤだった。どことなく幼さの残る愛らしい顔だちが「シンドラーのリスト」の切ないメロディに紛れ、柔軟性に富んだ肢体で美しい演技を披露するのだ。
フィギュアに詳しい在米のジャーナリスト・梅田香子氏がリプニツカヤの実力を解説する。
「彼女はバレリーナでも有利とされる二重関節の持ち主なんです。母親がフィギュアで成功させたくて、2歳の頃から彼女の股関節が広がるように鍛えたといいます。その後、彼女にとって追い風だったのは、ソチ五輪が決まってから、それまで援助がなかったフィギュアの環境が、国をあげて援助されるようになったことです。今や、ロシアでは小さい頃からやる気と才能があれば、親は何もお金がかからないといいます」
恵まれた環境を手に入れ、実力は開花した。
すでに英国の大手ブックメーカー・ウィリアムヒル社も2月14日現在、金メダル予想で、リプニツカヤとキム・ヨナのオッズが「2.10」で並び、「5.00」で続く浅田を大きく引き離している。さらには、リプニツカヤとキム・ヨナの直接対決予想にいたっては、「1.80」と「1.91」でわずかの差ながらも“15歳の新星がキム・ヨナ超えする”との予想なのである。
こんな声に韓国メディアはピリピリムードだ。
「『ヨナのライバルは浅田ではない』と報じて、リプニツカヤを異常警戒していますね。一方でアン・ソヨン大韓スケート連盟理事が、キム・ヨナのジャンプの高さや飛距離をベタボメしたうえで、リプニツカヤの回転不足やエッジの間違いを批判したり、ソウル放送の解説委員がジャンプの不正確さを指摘したりしていた。団体戦での高得点を地元開催の“ホームアドバンテージ”と見て、あくまで実力ではキム・ヨナのほうが上というのを強調した記事を多く見かけます」(韓国事情に詳しいライター)
前回女王の周辺も騒がせているようだが、前出・梅田氏もこう続ける。
「採点において、技術点以外の部分では、やはりホームが有利だと思います。ジャンプに関しては、彼女は正直言って低い。真央ちゃんが15歳の時はもっと跳んでましたよ。ただし、高いほうが加点はつきますが、低いジャンプは転ばないんです。つまりミスをしない。前回バンクーバーの男子でエヴァン・ライサチェクが4回転を回避して金メダルを獲得したことが象徴するように、ミスをしない、転ばないというのが今のルールでは有利ですからね」
さらには6月生まれのために15歳でありながら、前年の7月1日までに15歳となっていたため年齢制限に引っ掛からず、9月生まれでトリノ五輪を逃した浅田とは違い、今回の五輪に出場できた強運もある。
「タラ・リピンスキーが長野で金を獲ったのが15歳、サラ・ヒューズがソルトレークで金を獲ったのは16歳でした。彼女たちはその後、すぐにトリプルを跳べなくなっています。15歳ぐらいがピークで終わった選手はいっぱいいますが、リプニツカヤも肉体的全盛期にメダルを獲って引退する可能性はありますね。一方で真央ちゃんは、子供の頃から苦難を乗り越え、ここまでよく頑張ってきましたよ」(前出・梅田氏)
韓国メディアの注目がロシアの小悪魔に向いているうちに、浅田に悲願を達成してほしいものである。
◆アサヒ芸能2/18発売(2/27号)より