テリー 織田さんが注目している選手は誰ですか。
織田 個人的にはやっぱり浅田選手には頑張ってほしいなと思っていますね。特にアクセル以外、今年のスピンだったりステップであったり、他のジャンプでの評価というのは、すごく浅田選手は高いですし。現にグランプリファイナルの大会でも、アクセルの失敗はありましたけど、フリーでは、他の選手と点差を離して優勝しているので。
テリー トリプルアクセルって、練習の時にはできても、体力を非常に使いますよね。野球でいえば160キロ投げるみたいなものだから。そうすると、試合まで温存してるんですか? 例えばわざと練習しないとか。
織田 そうですね、一般的には「朝に練習して、夜に本番」という試合の流れなんですね。朝に跳ぶのは、本当にイメージ作りだけというか、1回、2回いいのが決まれば、もうそれでしっかりいいイメージを持って本番に臨むように、浅田選手の場合はしていると思います。
テリー 織田さんの場合はどうだったの?
織田 僕の場合は、結構ギリギリまで何回も跳ぶという感じでした。失敗してもいいので跳ぶ。ここでたくさん失敗しておくか、という感覚で。自分を奮い立たせるために、試合直前にはいろんな心の持って行き方があると思うんですけど。
テリー 試合の時は、ライバルがここで失敗すればいいのに、とかは思わないものなんですか。
織田 人の失敗を願ったことはないですね。
テリー あ、ないですか。俺より人間ができてるなあ(笑)。ライバルが失敗した時、「しめた」とか思いませんか。
織田 そういうことを思うと、逆に自分に降りかかってきそうというのもありますし、自分が100%の演技をして、そして相手も100%の演技をして、その条件下で勝った時に「やっと勝てた」と思うので、相手の失敗を願ったことはないです。
テリー でも、前の選手がいい点数を出すと、嫌だなぁとか思うでしょう。
織田 そう思ってしまった時に、「自分ならそれ以上にできるんだ」と気持ちを持っていくのがその人の強さだと思うので、そうするように努めていました。
テリー すでに引退されていますが、スピードスケートの清水(宏保)さんとか堀井(学)さんは、試合前にずっと音楽を聴いて集中してたじゃないですか。織田さんは集中する時にそういうのはあったんですか。
織田 ありましたね。他の選手がいい演技だったら歓声がすごいので、なるべく聞こえないようにするとか。でも、僕の場合は結構マゾ体質なので(笑)。
テリー あ、Mですか(笑)。
織田 その歓声を聞いて、逆に挑戦する気になるっていうか。
テリー フィギュアはジャンプで失敗してひっくり返るじゃないですか。あれはどれだけ痛いんですか。
織田 いや、練習中だと痛いんですけど、試合中はアドレナリンが出ているので、何とかごまかせるんです。もう、痛みを感じないくらい集中しているので。僕は一昨年の全日本で最初の3つ目のジャンプの時に捻挫したんですが、やっぱりその時は痛みはわかりませんでした。次の日に足が腫れているのを見て、ひねったかな? みたいな感じで。
テリー 女子選手なんか、みんな水着みたいな格好をしてますから、お尻なんか、きっとアザになってますよね。
織田 全部終わったあとに「あれ? イタタタ」みたいな感じだと思います。それくらい、演技中は痛みに気がつかないんですよ。