勝負した馬が「あ~あ、4着」「逃げ切れず馬群に沈む」「後方からやって来ない」‥‥馬券ファンがいちばん見たくない光景だ。その主役を演じた騎手たちをご紹介しよう。
端正なルックスから栗東の「ほほえみ貴公子」と呼ばれる幸英明(38)。ゴルフの腕前がシングルで、そのスマートぶりから女性人気も高い一方で、あのヤンチャで知られる藤田伸二(41)が腕っぷしでも一目置く存在だ。最近ではホッコータルマエの主戦としても知られる。
だが、昨年の成績は馬主孝行ばかりというのが残念な素顔。4~8着の「入線キング」の冠がピッタリのファン泣かせの騎手だった。スポーツ紙栗東担当記者が嘆く。
「幸の目標は、年間1000回騎乗なんです。乗り馬を手放しても、積極的に代打稼業にいそしんでる。その結果、馬主が喜ぶ賞金拾いのようなレースが自然と多くなるんですよ」
東の馬主孝行息子には三浦皇成(24)が認定された。美浦の厩舎関係者が、かつて武豊2世と呼ばれた男の現状を話す。
「新人の頃は積極的な競馬で成績を残していた三浦だが、最近は控える競馬で、仕掛けのタイミングもできるだけ遅らせている印象だね。ここ数年、成績が伸びず、彼なりに考えた末の戦法。これなら賞金は拾えるし、思わぬ人気薄を激走させることもできる」
先日、2月10日の東京でもシンボリネルソ(12人気1着)、カディーシャ(10人気2着)と2つの大穴を提供したばかりだ。
「人気薄でチョロチョロ賞金圏に来ることがあり、この4~8着が多いというデータは、今の三浦の特徴が非常によく出ているから、思わず笑ったよ。ただし、人気馬だと仕掛け遅れて差し届かないことも多い。1月19日の京都・紅梅Sなんて、1番人気のダンスアミーガに騎乗し、スローペースを後方待機。まったく流れに乗れず、とても人気馬の競馬とは思えなかったね」(関係者)
そして、馬券ファンを暗い気持ちで帰途につかす「最終レース4着王」は、東のマイネル軍団のBランク騎手、津村明秀(28)と石橋脩(29)が火花を散らした。昨年11月16日の福島12Rでは1番人気のエスユーハリケーンに騎乗し3着、半馬身差の4着だった津村とまさにライバル対決を演じた(笑)。専門紙記者が話す。
「津村はマイネル&コスモ軍団の有力馬に乗れれば、もっと勝ち星を量産できそうですが、中央なら柴田大知(36)らの後釜扱い。石橋脩も堀厩舎の有力馬に乗る回数が戸崎の加入で明らかに減りました。今年は正念場でしょう。調教後も美浦トレセンから車で1時間ほどのビッグレッドファーム鉾田に顔を出し、乗り馬の確保に余念がない」
その石橋脩、早くも今年1月26日の中山12Rで1番人気のロンギングダンサーで3着馬からクビ差の4着。今年こそは「最終4着キング」の単独王座に輝いてしまうのだろうか?
中堅騎手で王冠奪取に成功したのが、西の松山弘平(23)と東の丸田恭介(27)の2人だ。
積極策で知られる松山は、今年2月9日の小倉11R、「逃げ切れない王」らしく、1番人気のサンライズピークで終始先頭も、G前でしっかりとかわされ4着だった。西のエージェントが彼の“性癖”を話す。
「厩舎スタッフから『もう少し(馬のタイプで)ペースを考えたら』とアドバイスを送られても、『逃げてると気持ちがいいんですよね』と、爽快すぎる返事。逃げないレースだと、いい勝ちっぷりを見せるんですけどね(笑)」
今年もすでに2月15日の午前中、2度も逃げて失速するものの、10Rでは3番人気で追い込んで1着、翌日も4Rで3番手に折り合い、1番人気に応えた。
頑固な個性派として名をとどろかせている丸田。「差して届かないで賞」も狙っていた!? エージェントが続ける。
「たぶん、この受賞を誇りに思ってますよ(笑)。若手にも常日頃から『失敗を恐れず、内を突け』とアドバイスを送ってますからね。あとはローカルだけでなく、中央でも追い込みを決める回数を増やせるか。象徴的だったのが、ダイワマッジョーレとのコンビ。オープンまではトントン拍子でしたが、そこから差し損ねが続き、蛯名に乗り替わったら重賞で2着→1着。マイルCSでも2着。丸田で、同じ以上の成績を残せたかは疑問ですからね」
ま、失敗を恐れないのもほどほどに(笑)。