これも「女帝・櫻井よしこ」のご託宣では──。
そう噂されているのは、自民党・高市早苗政調会長の去就問題だ。高市氏は昨年9月の自民党総裁選で「保守代表」として、岸田文雄総理の対抗馬という形で出馬。そこで存在感を発揮したことから政調会長の座に就いたが、肝心かなめの清和会(安倍派)での評判が悪く、もはや求心力を失っている。自民党内からは「やはり櫻井よしこ氏(ジャーナリスト、国家基本問題研究所理事長)が100%信頼を置く人でないと。特に女性は、安倍派ではダメだ」との話が持ち上がっているという。自民党関係者が苦笑する。
「櫻井さんは、安倍晋三元総理が判断に迷った際のアドバイザーであり、精神的支柱という位置づけにある人物。特にここ5、6年は、彼女の意向が深く反映される状況になっている。いや、櫻井さんの判断がないと決断できない、と言ってもいいほどだよ」
昨年9月の自民党総裁選で高市氏は「日本を守る覚悟を持って出馬します」と、自民党右派の代表として出馬したが、実はこの裏で動いたのは森喜朗元総理だった。
「森さんは安倍さんに直接電話をして『こういう時だからこそ、保守の流れを継続するための候補者を擁立するべきだ。候補者は自分がとりまとめてもいい』と話したようです」
岸田派関係者はそう証言するが、高市氏にとって森氏は、公私にわたって相談する政界の後見人。高市氏自身も上昇志向が強いため、森元総理の誘いに乗ったのだ。
安倍氏は昨年の総裁選では、勝ち馬に乗ることでキングメーカーの地位を確保できれば、と考えていた。ところが森氏の言葉を受け、「自らの地位を高く売るためにも、高市氏に戦わせて牽制することも必要だ」と考えて高市氏の出馬に乗ったものの、安倍氏の背後にいる日本会議系の自民党右派は、必ずしも高市氏を推していなかった。
高市氏は同じ奈良県出身の国会議員で自民党右派の大物だった故・奥野誠亮元法相にも師事していたが、芳しい評判は聞こえなかった。かつて天理教との関係も取り沙汰されたこともあり、自民党右派からは「思想の柱がしっかりしていない」との声も出た。特に自民党右派から、「彼女のひと言で、全てが変わる」と言われている櫻井氏は、高市氏の出馬にはそれほど積極的ではなく、櫻井氏のウェブサイトにあるコラムでも、高市氏を将来の総理大臣候補と持ち上げる言説はない。
「政策的に支持はすれど、まだ修行が足りないという形。高市氏が茂木敏充幹事長らと対立しても、守る気配は見られません」(自民党担当記者)
安倍派内には下村博文元文科相、萩生田光一経産相ら、次の総裁を狙う候補の方が櫻井氏とより近いため、
「高市氏はこれで上がりでは‥‥」(前出・自民党担当記者)
だが、松下政経塾を経て野党議員から出発した高市氏の粘り腰は尋常ではない。政調会長続投は考えられないものの、自民党内からは、こんな警戒感も出ているのだ。
「政調会長を簡単に退くとは思えない。今年7月の参院選前にウクライナ問題などで右派にスリ寄るような、強烈な岸田批判をカマすのでは」
「女帝VS総理を狙う女」の戦いや、いかに──。