令和の怪物がついに本領を発揮した。長いリーチから放たれる弾丸のごときストレートと、同じ軌道からホームベース手前でストンと落ちる高速フォークのコンビネーションで奪三振ショーを展開。一躍、22年シーズンの主役に躍り出た新・ミスターパーフェクトを待ち受けるミッションをレポートする。
「メジャーでも即戦力。早ければ、3年以内にストーブリーグの主役になる」
鼻息も荒くこう語るのは、さる大リーグ球団の極東スカウトである。4月10日のオリックス戦で、完全試合、プロ野球記録を更新する13者連続三振、同タイとなる1試合19奪三振の離れ業を披露したロッテ・佐々木朗希(20)に米球界からラブコールが鳴りやまない。先の極東スカウトもフィーバーぶりに舌を巻く。
「すでに、米球界でエース格のダルビッシュ有(35)や大谷翔平(27)に引けを取らない評価を得ています。しかも、昨季メジャーで問題視された、粘着物を使用した形跡もない。もはや、マイケル・ジョーダンやクリスティアーノ・ロナウドのように『すげー!』と思うしかない存在。パドレスやドジャースをはじめとする複数球団で、佐々木のチェック体制を強化する動きが確認できています」
まさに、日本球界のスケールでは収まりきらない全世界のトップ・プロスペクト。その歴史的な投球シーンをプレイバックすると、高卒3年目とは思えない圧巻の完成度を見せつけていた。さまざまな球団で指導し投手王国を築いてきた、野球評論家の佐藤義則氏が手放しで賛辞を送る。
「まず驚くべきは、球数の少なさです。本来、19個の三振を奪いながら球数を105球にまとめるのは至難の業。佐々木の場合は160キロ台の直球と150キロに迫る高速フォークでストライク先行の投球が可能だったから、球数を抑えられたのでしょう。簡単にツーストライクまで追い込んでしまえば、真っすぐに振り遅れまいと低めに落ちるボールに手が出てしまいますからね。貧打のオリックス打線が最後まで攻略できなかったのも容易に頷けます」
もっとも、今回のパーフェクト達成は、本拠地・ZOZOマリンスタジアムの地の利抜きには語れない。
「マリンはフォークを得意とする投手との相性が抜群にいい。マウンドに吹く向かい風の影響で落差が大きくなりますからね。ちなみに“お化けフォーク”の代名詞を持つ野田浩司氏(54)が、95年に1試合19奪三振の記録を樹立したのもマリンでした。ただでさえ、手足の長い佐々木のフォークは、角度がついて実際の変化以上に落差を感じるもの。向かい風がフォローして、今後さらなる完全試合もなきにしもあらずですよ」(佐藤氏)
さしずめ“マリンフォーク”とも呼べる魔球だろうか。日曜日の本拠地開催ゲームでは、快刀乱麻の奪三振ショーの公算が大きい。
スポーツ紙デスクが解説する。
「井口資仁監督(47)は囲み取材で『1回どこかで休ませる』と明言していますが、あくまでローテを飛ばすのは、本拠地開催でない日曜日のみだともっぱらなんです。そもそも稼ぎ時に佐々木を登板させないワケにはいきませんからね。もし早いイニングでノックアウトされても、翌日のオフを見越して遠慮なくリリーフ陣でサポートできる。今季は“サンデー朗希”が定着しそうですよ」
登板翌日の月曜日は、ひとしきり佐々木の話題でもちきりになるに違いない。