佐々木の覚醒に色めき立つのはファンばかりではない。チームを支える球団スタッフの中にも、佐々木人気に便乗する輩がチラホラ。
「チームの広報部長ですよ。まるで人気者を囲い込むように佐々木にしなだれかかっています。囲みや会見では、必ず佐々木の横に付きっきりで『その質問はNG』と横やりを入れることもしばしば。真面目な野球のメカニックに関する質問すら断られることもありました。さらに、子飼いの朝刊紙ばかりに情報を与える“メディア差別”が露骨で、佐々木が活躍すればするほど態度が不遜になっていく。一部からは『前職の記者時代にキャップすら経験していないくせに』との陰口が聞こえてきます」(スポーツ紙デスク)
とはいえ、佐々木フィーバーに沸く球団に対し、本人はあくまで冷静。球団愛についても希薄なようで──。
「入団前から燻る球団への不信感が消えない。実は、ドラフト前に面会に来たスカウトたちに『津波で亡くした父と祖父母のいる、東北の地でプロ野球選手になりたい。東京の球団は手を引いていただけませんか』と申し入れていたんです。ドラフト前に『12球団OK』と口にしてたのは、岩手県高野連から言わされていただけだとか。セ・リーグの在京球団が指名を見送りましたが、東北に本拠地を置く楽天の他、北海道の日本ハム、在京の西武、ロッテが1位指名を強行したんです」(球界関係者)
19年10月17日のドラフト会議で交渉権を得たロッテ。誇らしげにガッツポーズを決める井口監督とは対照的に、佐々木の伏し目がちな表情に笑顔が浮かぶことはなかった。
「指名から12日後の入団交渉の席で『あれだけ言ったのに、どうして僕を指名したんですか?』と力なく尋ねる高校3年生にロッテ担当者は『佐々木君、うちは東京じゃなくて“千葉”のチームだよ』と答えたそうです。結局、指名挨拶までに時間を要したのも、佐々木サイドが指名を断ってメジャーに行く口実を探っていたからだといいます。当時の高校の監督が旧知のメジャー関係者に相談し、1年間だけ独立リーグで浪人させるプランもあった」(球界関係者)
それでも、苦渋の選択でロッテ入りを決断したのには、こんな理由があった。
「女手一つで育ててくれた母親と年の離れた弟に苦労させまいと考えたのでしょう。ちなみに入団条件の中に、いつでもメジャーに行ける条項を加えたという話が伝わっている。現在の年俸こそ推定3000万円に抑えられていますが、このままケガなく破竹の活躍をすれば3年後には球団の日本人最高年俸の2億円突破も見えてくる。そうなれば、昨オフの契約更改の下交渉で『一律25%ダウンからのスタート』と言い渡して、ひと悶着あったばかりのシブチン球団としては、ポスティング制度を使って放出せざるを得ないでしょう」(球界関係者)
入団の日からメジャー行きのXデーは刻一刻と近づいている。振り返れば、温室育ちと揶揄されてきた2年間も、海を渡るための準備期間だったのかもしれない。