X氏が語る。
「これまでの振り込め詐欺みたいに通帳や銀行の窓口だと、何回かやってるうちにバレる可能性があるよな。あるいは本人に接触して取りに行くようなパターンだと、警察が待ってるかもしれない。それで最近は、空き地に宅急便で現金を送らせるって詐欺が出てきたな。周囲を確認しながら、番号追跡機能で調べて、時間合わせて受け取るんだ」
皮肉にも、空き地が多くなってしまった被災地ならではの犯罪と言えよう。
「詐欺関係では、通帳集めはここ、電話番号集めはここ、役者集めはここ、みたいにヤクザ組織が垣根を越えて協力し合ってるってな」(前出・X氏)
聞きたくはない「絆」である。
とはいえ、そこはシノギを削る闇社会。醜い足の引っ張り合いもあるという。
あの大震災で大打撃を受けた仙台の繁華街では、再生できなくなった飲食店や風俗店も多くあった。過去の店が立ち退いたあとには新たな店舗が入って再生が行われたが、なんと、「みかじめ料」の奪い合いが起きていたというのである。
風俗業者とヤクザ組織を取り持つブローカーが明かす。
「震災後、セールスマンみたいにリクルートスーツを着て、関西のヤクザがまず呼び込みに『店長さん、いまっか?』って声をかけてきて、愛想もよくて腰も低い。聞いた話だと、店長に組織名を明かして『ケツ持ちしまっせ。地元のヤクザより安くやりまっせ。このビル何店舗入ってまっか? 全部で話つけてくれまへんか?』なんて持ちかけてたそうです。その安さのおかげで、地元ヤクザとまとまっていた風俗店のみかじめ料の権利を強奪したケースもあったといいます」
他県のヤクザが乗り込んできて悪事を働くのは想像もつくが、一方で、被災地を回った海外の農業関係者は、とある被災県の農家からこんな恐ろしい言葉を耳にしたという。
「コメ農家が『コメから放射能が出たら、新潟のほうから買って混ぜて売っちゃうんだよ』って。まあ、ショックが大きすぎて、破れかぶれで言ったのかもしれないですけど、あんまりな発言でしたね」
いずれにせよ、大震災という空前絶後の闇が「悪魔」たちの所業を加速させているのが現状だ。
「結局、行政の動きがノロいですよね。復興が進めばつけいる隙はないはずですが、落ち着くのに、あと2~3年はかかると思います」(村上氏)
除染作業の前に、“悪魔”狩りという作業も必要のようである。