人口約16万2000人のうち、なんと約4000名もの死者・行方不明者を出し、震災地の中で最大被害に見舞われた宮城県石巻市。そんな同市の震災復興のガレキ処理事業で、火事場ドロボー的な補助金チョロまかし疑惑が出たのは、2012年4月のことだ。
「地元・藤久建設の伊藤秀樹社長(51)が、震災後に『石巻災害復興支援協議会』というNPO法人を発足させ、集まったボランティアを組織し、『奇跡の災害ボランティア』とまで呼ばれるほど熱心に、市から依頼を受ける形で復興事業に活用していた。が、協議会会長と藤久建設社長という2つの顔を持つ伊藤氏が、日本財団から無償貸与されたダンプを使い、ボランティアをガレキ撤去作業に従事させながら、藤久建設が請け負った事業として水増し報告し、補助金を受け取っていたことが明らかになった」(地元建設業界関係者)
報告書では、本来は10名にも満たない藤久建設の従業員が50~60数名に膨れ上がっていたり、現場写真も同じものが何枚も使い回されていたというのだから、あきれるほかない。そんなものに市側が支払った金額が、11年8月~12年4月の間で約1億2000万円。騒ぎが大きくなったことで伊藤氏は466万円ばかりを自主的に返納したものの、経緯や金額の妥当性については明らかにされなかったのだ。事態を糾弾し続けている石巻市議会議員・黒須光男氏が言う。
「市議会では、12年5月に百条委員会を設けて調査に乗り出しましたが、伊藤氏側が給与台帳や作業日誌などの記録提出を拒んで、記録提出義務はないとの確認を求めた訴訟を起こして抵抗を図ったため、委員会は不調のまま終わらざるをえませんでした」
結局、伊藤氏が起こした訴訟は、地裁、高裁とも伊藤氏が負け続け、今年1月、最高裁で上告が棄却された。
「司法が受け付けなかったんですから、疑惑の本格解明が待たれるはずなんですが、委員会は閉じてしまったし、市長や市側はまったくの及び腰で、そんな気配はありません。あとは警察の捜査の進展を待つばかりです」(前出・黒須氏)
本来は真っ先に徹底調査に当たるべき市は、
「我々としても調査し、法的処置の検討も行いましたが、あの混乱期ですから。書類は不備でも仕事はされたとの認識で、警察の捜査には求めがあれば応じる方向で対応しています」(災害廃棄物対策課)
と、まるで他人事。
疑惑渦中の伊藤氏は、再三にわたる取材の求めに応じることもなかった。