オープン戦でいよいよ兼任監督としてのベールを脱いだ中日の谷繁元信監督。いきなり、チームが連敗に追い込まれるものの、相変わらず泰然自若の構えだ。その裏では、開幕をにらみ用意周到とも言える「古田ルール」対策があった。
「キャンプでの疲れを少しでも取りなさい、と神様が雨を与えてくれたのではないですか」
3月5日の対西武とのオープン戦が雨天中止になっても、谷繁元信中日兼任監督は動じることなく、淡々と話した。
この日の雨が象徴するように、中日のチーム状態は決していいとは言えない。先発陣が固定されていない中、中継ぎの浅尾拓也が肘痛を発生。3月28日の開幕を控え、復活が期待されたやさきだっただけに、新監督として焦らないほうがおかしいのだが、まったくと言っていいほど、その様子からは動揺の色はうかがえなかった。
雨でオープン戦が中止になり、実戦での調整の場が少なくなった投手陣についても、「ヘッドコーチと投手コーチがファームを含めていろいろ調整の場を作ってくれるから任せている」と、意に介していない。
高木守道前監督が率いていた昨シーズン、谷繁は「選手がいちばん嫌うのは、場当たり的に勝ち負けに一喜一憂すること」と、その場の感情を態度に表す監督の姿に、批判的な姿勢を見せていた。それだけに、雨で1試合流れたぐらいでアレコレ態度に出したくないと思ったのであろう。泰然自若に構える谷繁の姿に、西武から中日に移籍して活躍する和田一浩も称賛を惜しまない。
「クリーンアップを打ったわけでもなく、7、8番を打ちながら、こつこつと記録を積み重ねてきたのも、肝っ玉が据わっていなければできないでしょう」
まだ序盤も序盤、開幕前から騒ぎなさんな、というのが谷繁の本音かもしれない。
とはいえ、兼任監督の先行きに不安がないわけではない。本拠地・ナゴヤドームでの谷繁兼任監督のお披露目となった3月1日の対DeNA戦。谷繁自身が「監督といっても8対2で選手」と語っているように、みずからがマスクをかぶりスタメンで出場。捕手としてチームを引っ張ることでチームをまとめると就任時表明したことが実現できるのか。周囲もファンも、その采配に注目した。
しかも相手は、古巣・DeNA。谷繁監督就任と同時に、友利結投手コーチと波留敏夫打撃コーチを引き抜く形で獲得している因縁もある。それだけではない。落合博満GMとDeNAの中畑清監督は同世代でも犬猿の仲であり、最初に一矢報いておきたい相手でもあったのだ。
だが、ホームでのお披露目にしては、いささか寂しい船出となった。試合結果は、0対2での完封負け。肝心の打撃も2打数無安打と振るわなかった。
さらには、球場の景色も一変した。横断幕やプラカードのみならず、トランペットなどの鳴り物が禁止され、入場者も1万5000人と決して多くはなかった。
その背景には、今年1月、プロ野球暴力団等排除対策協議会(NPB事務局)が、中日の私設応援団連合に、応援許可を出さない方針を決めたからだ。その結果、中日応援団が不在のままでの初陣となってしまったのだ。
結局、ホームでの初陣となったDeNAとの2連戦は谷繁が先発マスクをかぶりながらの2連敗。谷繁は、
「山井(大介)も大野(雄大)も先発ローテーションの中にキチンと入ってくれてるし、先は見えているじゃない。まだ始まったばかり。いろいろ考えながらやっていきますよ」
と、144試合目の結果を見据え、長期展望に立っての発言に終始した。