事実、落合GMは、キャンプ地の北谷の球場に姿が見えないかと思えば、沖縄でキャンプを張る大学の春キャンプにしっかりと出かけている。キャンプの休日となった2月17日には、明大のキャンプ地まで足を延ばして選手を自分の目で確かめていた。
中日の球団幹部の一人は、「GMがいれば、気になってしまうので選手探しに動いてもらったほうがありがたいし、うまくいくと思っている」と、役割分担がキチンと分かれていれば気にする必要もないと、2人の関係を不安視していない。
かつて落合は監督時代、「現場のことは現場に任せておけばいいのよ」が口癖だった。それが今回のキャンプからは、ヒシヒシと感じられるのだ。
キャンプでは、選手と監督を兼任する谷繁は大忙しである。評論家たちの接客に時間を割かなければいけない。その中には、1973年に「選手兼任の優勝監督」となった野村克也もいた。野村は激励とともに、兼任監督の難しさについてもこんなアドバイスをしている。
野村「これまでは捕手として選手を支える立場だったけど、監督は『切る』ことも考えないといけなくなる」
谷繁「選手を二軍に落とす時には、その理由をしっかり伝えなければ、と思います」
野村「選手兼任で引き受けた以上、試合には出続けてほしいね」
谷繁「僕は必ず出ます。チームの戦力として求められるかぎり、スタメンで出ます」
野村「捕手はベンチに戻っても、どうしても次の守りを考えてしまう。だからヘッドコーチが大事だよ。中日の場合はモリシゲ(森繁和)だけど」
みずからの練習にも精を出し、当然、チーム全体も見なければならない。体がいくつあっても足りない状態の中で、そんな谷繁兼任監督の姿を森繁和ヘッドコーチはこう言った。
「監督は疲れてないかって? 疲れていないわけがないだろう。そんなのは最初からわかっているんだから」
この言葉には、勝利のみにこだわる仕事人のような趣がある。谷繁が二足のわらじを履くうえでもバックアップ体制は万全のようだ。