開幕から9連敗するなど、今季は最下位確定と虎党を泣かせていた阪神タイガースが、交流戦では好調だ。6月5日の日本ハム戦で勝利し、この時点で、6月は負けなしの5連勝。気の早い虎党は「奇跡の優勝や」と息巻くが、プロ野球関係者からは、
「近本、中野、糸原は、大学から社会人を経ての入団。佐藤、大山も大卒選手。レギュラーを獲った高卒野手はいない。ある意味、阪神打線は今年がピークだ」
と将来を危惧する声が出ている。
「強いチームは高卒野手が軸だ」というセオリーがプロ野球界にはある。村上、山田が中心のヤクルト、岡本が不動の4番に座る巨人然り。18歳でプロ野球の門を叩き、4年間は2軍で鍛錬。それでも22歳、大卒選手と変わらず、プロ野球選手のピークといわれる30歳前後まで約10年は活躍できる。チームは主軸ができるため、編成作業も楽になる。
そんな視点で見ると、6月5日の阪神のスタメンは投手を除けば、島田、中野、近本、佐藤、大山、糸原、ロハス、長坂…高卒選手はいない。糸原、中野、近本は大卒後、社会人野球を経て入団した。
この試合、交代で出場した野手は植田、坂本、山本、北條、糸井、小野寺。ここまで広げても、高卒野手は植田、北條の2人のみ。植田は26歳、北條は27歳。将来性には疑問符がつく。
同じことを考えているのは、阪神OBの岡田彰布元監督だ。
「(阪神は)これからの戦力はない。今がいちばんいい時」
「(阪神だけが)高卒のレギュラーがいない。2軍から高校生が上がっていない」
これは2022年5月7日に配信された、同じくOB川藤幸三氏のYouTube動画に出演した際の一コマである。
この動画では「監督就任の話が来た際は?」と聞かれて「それは考えますよ。この何年かは歯がゆい思いをしてきたから」と次期監督への意欲を示したとして、再生回数10万回超。岡田氏は、
「大学を出てから社会人を経験した野手が若手と言われ、5年経つともう30歳。ピークが過ぎてしまう」
そう言って、野手の高齢学歴化の弊害を何度も指摘している。
とはいえ、高学歴打線でようやく勝ち始めたことで、将来を見据えた高卒野手への切り替えができない状況になってきているというのは、なんとも皮肉な話だ。
(健田ミナミ)