あの芦田愛菜が6月23日の誕生日で、新成人となる。「Mother」(日本テレビ系)で大ブレイクして以来、女優業も学業も順風満帆に進んできた彼女だが、先月、複数メディアが「医学部内定」というデマを報じた。虚実入り乱れたネットニュース業界とはいえ、未成年者の個人情報のデマ拡散は越えてはならない一線を越えた感がある。それが結果として、彼女が幼い頃から育んできた夢を壊すことになるかもしれないのだ。
「彼女がどの学部を選んだとしても、卒業後の海外留学は既定路線でしょう」
そう話すのは、進学「内定」のデマを流された医学部関係者だ。
「内部進学の選考基準となるのは、高校3年間の成績です。3年生になったばかりで進学先が決まることはありませんし『内定』という制度はありません。デタラメもいいところです。記事が出たタイミングも悪い。あれは内部進学の選考基準になる定期テストの前でした。3年間の総合成績上位3%しか医学部には進学できません。定期テストでのたった1問のケアレスミスも、医学部志望者にとっては致命的になる。想像を絶する持久戦です」
大学受験を控えた多感な高校3年、しかも進路に影響する定期テストの前に、あたかも内部進学が決まっているかのような情報が流れることには、本人も周りも心穏やかではいられないだろう。
「愛菜ちゃんは『難病の人を救う新薬を作りたい』『専門的な仕事と家庭を両立できる』と語り、薬剤師や病理医といった理系女子のスペシャリストを目指してきました。ところが日本で病理医になるには、医学部卒業後、日本国内の病院で研修医として2年、さらに大学院やガン専門病院での4年以上の研修が必要となる。どんなに早くても、病理医になるのは29歳、30歳になってしまいます。そして懸念されるのが、内定デマ騒動の反響でわかったように、愛菜ちゃんが研修医になれば研修先、勤務先にストーカーやモンスター患者が押しかける恐れがあること。特に新型コロナ以降、医療現場は殺伐としており、患者と家族の暴力、暴言が増えています。ですが、病院は不審者でも患者と名乗られた以上、診療を拒否できません」
前出の医学部関係者はそう言って、顔を曇らせた。
研修先は研修医と受け入れ先、双方のマッチングで決まるため、警備が充実している都内の大学病院とは限らない。
「日本で病理医になるためには2年の研修医経験は必須ですから、医学部に進学したとしても、卒業後に海外留学するのが既定路線でしょう。病理医になるにも近道だし、欧米の製薬企業で新薬を作る研究職になる道も開けます。新型コロナの特効薬を愛菜ちゃんが作る可能性だってあるわけです。彼女の親族には商船会社の会長さんもいらっしゃるので、もともと国際的に活躍することを念頭に置いて教育されているはず」(前出・医学部関係者)
ただ、2023年から、アメリカの医科大学が定めた「医療教育水準」の認定を受けていない日本の医学部の卒業生は、アメリカの大学や病院での研修ができなくなる。今までのように、医学部ならどこでもいいというわけにはいかなくなるのだ。医学部関係者が続ける。
「アメリカから認定を受けている当医学部の内部進学を志望するとしても、他大学の一般入試や推薦入試を受けるにしても、愛菜ちゃんに限らず今年の受験生にとって、医学部入試はより狭き門です」
芦田を一人の新成人女性として尊重せず、いつまでも「天才子役」「少女」としてイジっているから、妄想記事が出るのだろう。毎日、テレビCMで多才さを発揮している彼女には雑音だらけの日本を飛び出し、世界で大活躍してほしい…そう願う者は、自分だけではないはずだ。
(那須優子/医療ジャーナリスト)