近年、「CKD(慢性腎臓病)」という疾患が注目されている。患者数は約1330万人(20歳以上の成人の8人に1人)いると考えられていて「新たな国民病」とも言われているのだ。増加の原因は、生活習慣の欧米化や高齢化が進んでいるためだと考えられる。
「CKD」は、腎臓の働き(GFR)が健康な人の60%以下に低下する(GFRが60ml/分/1.73平方メートル未満)か、タンパク尿が出るといった、腎臓の異常が続く状態を指す。
腎臓機能は、年齢を重ねると低下していくため、高齢者になるほど「CKD」のリスクが高くなる。他にも、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常、肥満やメタボリックシンドロームなど、家族に腎臓病のリスク因子を抱える人は要注意だ。
「CKD」の厄介な点は初期に自覚症状がほとんどないこと。進行すると、夜間尿、むくみ、貧血、倦怠感、息切れなどの自覚症状が現れるが、その時にはかなり進行している可能性が高い。腎臓はある段階まで悪化してしまうと自然に治癒することは難しい。そのためにも定期的に健康診断を受けて早期発見で治療することが望ましい。
オーストラリアのボンド大学の研究によると、健康的な食事の摂取で「CKD」の進行を抑えられることが明らかになっている。具体的な食事スタイルは、塩分や脂肪の多い肉、糖質の多い菓子類、清涼飲料水、アルコールを控えること。野菜や豆類、ナッツ、全粒穀物、魚、低脂肪の乳製品、果物の積極的に摂取することだ。
これで「CKD」の発生リスクを30%減少でき、初期の腎障害の指標となるアルブミン尿のリスクを23%減少させられるという調査結果が出ている。
定期的検診と健康的な食事を心掛けて「CKD」を予防しよう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。