封切りから5日後にはノベルティーもパンフレットも入手困難となったトム・クルーズ主演のトップガン続編「マーベリック」。パンフレットの重刷、再販売や新たな来場記念品配布も始まり、封切りから2週間経っても「胸アツ」は続いている。
初めて観る人はもちろん、再度映画館に足を運ぶ人にとっても、どの劇場がいいのか。すでに全バージョンを見た記者の独断と偏見を書いてみる(多少のネタバレが含まれているため、閲覧注意)。
記者の推しは、映像美と音質重視の「IMAX」か、270度スクリーンでパイロット気分を疑似体験できる「スクリーンX」。
これまでの「スクリーンX」上映作品は、270度のスクリーン上映時間が15分から30分程度と短く、映画ファンのブログでは「差額料金を払う価値はない」と散々な言われようであったが、「マーベリック」はスクリーンXのために作られた映画と言っても過言ではない。実際、トム・クルーズがプロモーションのインタビューで全く同じことを話していたのだが、大人の事情でそのインタビュー記事は消えてしまった。
映画の冒頭から正面と左右に映像が展開され、自分が空母艦上にいるかのような没入感、臨場感を楽しめる。より重厚になった「トップガンアンセム」を聴きながら、38年前に初めて「トップガンアンセム」に胸躍らせた時を思い出す。270度スクリーンは映画後半のクライマックス、ならず者国家の最新鋭機とのドッグファイトの場面まで続く。これぞ映画館で映画を見る醍醐味だ。
一方、差額料金に対し、満足度が低かったのが、座席が画面と連動する4DX。大した演出はなく、4DXならではのスリルが味わえたのは、前述のドッグファイトのシーンのみ。まるで自分がトップガンの精鋭達とアクロバット飛行を楽しんでいるかのような体感を期待していたが、文字通りの期待外れに終わってしまった。
字幕版と吹替版も、前者が圧倒的に楽しめる。マーベリックは前作のオマージュに富んだ作品であり、グースの死がベースにあった上でマーベリックやルースターの心情を描写しているのに、そのあたりのセリフ回しが完全に「意訳」「異訳」されていて、座席でずっこけてしまった。吹き替え版は家族連れや、トップガン封切り時には新婚カップルで見に行ったのだろうと思しき高齢者も多い。上映中も劇場全体がザワついているのも、残念なポイントだ。
この38年間、我々と同時代を生きてきたトム・クルーズとヴァル・キルマーのキャリアに思いを馳せ、映画業界の技術の進歩を堪能するなら、字幕版をスクリーンXで見ることを推したい。