当然ながら競走馬で得た獲得賞金は、JRAから「表の馬主」である妻の口座に振り込まれた。岡本氏が憤る。
「馬主が私だということは妻も子供も認めていますが、獲得賞金は全て私が散財したとシラを切っているんです。散財したという月日も、私が肝臓ガンで入退院を繰り返していた時のこと」
さらにコトを複雑にしたのは、訴訟代理人を依頼した大阪府内のT弁護士が、岡本氏が不利となる「背任行為」を繰り返したことだった。
「口座を調べてほしいと依頼しても『銀行が教えてくれない』と偽り、調べたら調べたで、預金残高がほとんどないような信用金庫や地方銀行ばかりを報告する」(岡本氏)
岡本氏は家賃収入を得る目的で、一括払いで9億円を投資し、マンションを建設。これも当然ながら、妻名義の口座の金による、妻名義の物件となった。
「Tは不在者財産管理人として別の弁護士をつけたにもかかわらず、私に家賃収入の報告を一切しなかった。マンションを担保にしていつの間にか発生していた負債も家賃収入で返済せずに、ひたすら放置。その結果、マンションは差し押さえられ、競売にかけられたのです。私からの再三の要求を一切無視し、損害すら与えたので、Tを11年に解任した。Tが家賃収入を横領した証拠もあるので、刑事告訴も視野に入れている」(岡本氏)
さらに、妻が行方をくらましてすぐ、長男が大阪府内に一軒家を購入した事実も判明した。岡本氏は強い口調で悔しさをにじませる。
「妻とTは昔から面識があったので、疑心暗鬼にもなった。私の利益ではなく、妻の利益になる行動をしたのは許せない」
どうやら妻とT弁護士が「グル」となって、岡本氏の財産をむしり取ったのではないかというのだ。
こうした事態を招いた根幹には、馬主の「名義偽装」問題がある。岡本氏が正式な馬主登録者で、自分名義の口座に賞金が振り込まれていれば、いくら身内といえども、口座から勝手に金銭を引き出せば横領罪に問われかねない。だが、「馬主」が妻だったため、獲得賞金の振込口座を三女名義に変更されたことさえも、裁判を通じて初めて知った事実だった。