七冠馬・キタサンブラックに一喜一憂させられた昨年の競馬界。今年は、デビュー3年目を迎えた藤田菜七子騎手がターフを盛り上げるに違いない。昨年の後半から急激に勝ち鞍を伸ばし、GI騎乗が現実味を帯びてきたのだ。その飛躍の裏には、騎乗の進歩だけでなく、所属先の根本康広調教師からの叱責やエージェント変更があったという‥‥。
JRAで唯一の現役女性騎手の藤田菜七子(20)。デビュー当初は話題先行の感なきにしもあらずだったが、2年目の昨年は6勝から一気に年間14勝にまで勝ち鞍を伸ばし、JRA女性騎手の年間最多勝記録(11勝)を20年ぶりに塗り替えたことも記憶に新しい。
そんな藤田は、年初から「機会があればGIに乗ってみたい」と抱負を語り、自信をのぞかせていた。そのための関門である通算31勝という数字をクリアしなくてはならないが、すでに開幕週の中山競馬場、2週目の中京競馬場でそれぞれ勝利をあげ、さいさきのいいスタートを切った。スポーツ紙デスクが振り返る。
「今年の1勝目は後方待機から大外強襲の1着同着。馬名の『ビックリシタナモー』にピッタリの勝ち方で、すごい歓声でした(笑)。本人は『2戦続けて乗せてもらっていたので、しまいはいい脚を使えるのもわかってました』と、馬の持ち味を引き出し、冷静に振り返っていた。2勝目は一転して、好位から抜け出しての横綱相撲。1番人気に応えての快勝で、騎乗ぶりも落ち着き払っていた」
開幕週の中山では重賞のフェアリーS(GIII)にも騎乗。前出・スポーツ紙デスクが続ける。
「ここに来て人気に腕が伴い始めた印象を受けます。それは馬主も感じているようで、2勝目をあげたクルークハイトの馬主は社台系のキャロットファーム。一口馬主の会員からの騎乗要望が増えているようです。6度目の挑戦となった重賞挑戦も、馬主でタレントの萩本欽一氏が菜七子ちゃんへの乗り替わりを快諾しての実現でした」
萩本氏は40年近い馬主歴を誇りながら、中山競馬場は初めてだったという。
「あの欽ちゃんを競馬場に呼ぶほど、彼女は何かを持っているんでしょうね。『今日は馬よりも菜七子ちゃんの応援』『奇跡を起こしてくれそうな予感がする』なんて笑顔で話していた。確かに最近、美浦の厩務員からも、『今週は菜七子の謎の追い込みに期待だな』なんて言葉も聞かれる。今年は馬主側からのオファーが増えて、初重賞制覇の期待がグッと高まります」(前出・スポーツ紙デスク)
まさに悲願をかなえ、菜七子スマイルが見られる日も近いかもしれない。