葬式でのエピソードで事欠かないといえば、たけし軍団だ。
ビートたけしはダンカンの父親の葬式で、棺桶で寝ていた遺体を抱き起こし、不謹慎にも一緒にダンスを踊ると、腹話術人形に見立てて悪ふざけ。
そんな経験をしたダンカンは火葬場で、軍団メンバーの親の遺体が入っている棺桶にサツマイモを入れ、焼き芋を作ろうとしたこともある(未遂)。
たけしの母親が亡くなった際は、軍団ではないが、林家ぺーが棺桶の中の遺体の写真を撮ろうとして、たけしの兄・北野大さんに激怒されたエピソードもあった。
先般の選挙で参議院議員になった浅草キッドの水道橋博士も、グレート義太夫の父親が亡くなった時に、やらかした。当時の若手芸人は、喪服を買うお金がなく、テレビ局の衣装さんに借りたりするのが普通だったという。
「軍団の同期に佐竹チョイナチョイナって仲間がいたんですね。この人、葬式に出たことがなかったんです。で、どんな服装で行けばいいかって相談されて、俺が『大丈夫。黒の上下だったら俺持ってるから』って貸してあげたんですね、一式」
そう優しそうに語り出した博士だが、これがトラップだった。
博士が貸したのは喪服ではなく、軍団がコンサートで使っているタキシードの上下。靴はなんとタップシューズだ。
「襟がキラキラで、フリル付いてんですよ。で、落合の斎場にスクーターに乗って、遅れて現れたんですけど。お経が読まれる中に一人、ものすごいエンターテイナーみたいな奴が、木魚の音とともにパチッパチッパチッといいながら近づいてくるんですよ」
と笑いをこらえる博士。
笑うに笑えない空気の中、
「座ってた枝豆さん(つまみ枝豆)がドォーっと飛び出してって『お前、いいかげんにしろ、このヤロー!! 場所わきまえろ』っつって、おもいっきりチョイナを殴って」
ようやく事態を飲み込んだ佐竹チョイナチョイナは、そのまま落合の斎場から逃げ去ったという。
「走って逃げていく音がパチッパチッパチッパチッてドップラー効果のように消えていくんですよ」
博士は楽しそうに語るのだった。
(坂下ブーラン)
1969年生まれのテレビディレクター。東京都出身。専門学校卒業後、長寿バラエティー番組のADを経て、高視聴率ドキュメントバラエティーの演出を担当。そのほか深夜番組、BS番組の企画制作などなど。現在、某アイドルグループのYouTube動画を制作、視聴回数の爆発を目指して奮闘中。