BPO(放送倫理・番組向上機構)が介在しなかった昭和のバラエティ界は、魑魅魍魎が集まるなんでもアリの世界だった。今ならアウトな企画が満載だった。そんな破天荒な番組の中心にいたのが、ビートたけし率いるたけし軍団である。芸人事情に詳しいフリーライターに話を聞いた。
「軍団の名を広めたのは、『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ!!』(日本テレビ系)でしょう。製作費が1回1億円というスケールは、当時でも破格です。ジャンケンで負けたら、ロウで全身を固められるゲームでは、グレート義太夫がスキンヘッドになっています。収録から数日間、体中からロウが取れなかったので、仕方なく頭を丸めたそうです。ラッシャー板前は、ハエ取り紙などに使用される超強力な粘着液の上に落とされ、板で体をサンドされています」
回想映像でさかんに出てくるのは、「バス吊り下げアップダウンクイズ」。クイズが出題され、不正解バスに乗車していると、バスごと大海に沈められるルールだ。今では罰ゲームの定番であるバンジージャンプも、同番組は先取りしている。しかも、不正解者が逆バンジージャンプで飛ばされる「人間ロケットクイズ」だった。
そんななか、軍団最大の犠牲者が生まれた。前出のフリーライターは続ける。
「浅草キッドの水道橋博士ですね。1989年に放映された『スーパーJOCKEY』(日本テレビ系)で、『人間サイコロ』に挑戦しました。CCDカメラが搭載された2メートル四方のサイコロに入れられて、雪山から落とされました。出るサイの目を当てるクイズですが、恐ろしいことに、リハーサルなし。結果、あまりの恐ろしさに、途中で蹴破って脱出。椎間板ヘルニアになってしまい、今なお腰痛に悩まされています。ちなみに、玉袋筋太郎さんのサイコロは谷底に向かって直進しましたが、偶然、雪山に刺さってストップ。救出に2時間もかかっています」
このころのキッドは月給が4万円。人命より笑いを優先していた、末恐ろしい時代の逸話である。
(北村ともこ)
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