参院選以降、公明党が「沈黙」している。岸田内閣が安倍晋三元総理の国葬を行うことについて、その賛否が政治問題化する中、「この件についてはコメントしない」と逃げ、世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)と自公政権の関わりについて、何の説明もしていない。
旧・統一教会と自民党との関係が問題化する中、自民党保守派からは「創価学会は問題なくて、統一教会だけが悪者なのか」との弁明が漏れる中、なぜ公明党は「沈黙」しているのか。
SNSでは「自公政権は自民党=旧・統一教会、公明党=創価学会のカルト政権だ」との書き込みが増えている。全国紙政治部デスクは、
「創価学会は旧・統一教会のようなカルト宗教ではない、ということ。そして、政教分離の解釈を改めて主張すること。公明党は正面からそのように論陣を張っていくべきなのですが、参院選で痛手を負っており、その状況ではないようです」
参院選で露呈した学会の地力低下、代表交代の見直し議論、なんとか避けたい軍拡路線。この3点が「沈黙」せざるを得ない事情だったのだ。
先の参院選、公明党は「800万票、7議席」を目標としたが、比例票は618万票で獲得議席は6。昨年の衆院選から比例票で100万票近く減らし、比例代表制が初めて採用された83年参院選以降、国政選挙で史上2番目の低さだった。
岡山選挙区で公明党推薦を拒否した自民党の小野田紀美氏は、39万2000票を獲得して当選した。16年の選挙では、小野田氏は公明党の推薦を受けて43万7000票を獲得。今回はそれと比して4万5000票減だが、
「約10万票といわれる公明=学会票が逃げてもきちんと戦えた。公明票がなくとも選挙を戦える一例になりました」(永田町関係者)
前出の政治部デスクも、次のように原因を解説する。
「学会員の高齢化が進み、活動が思うようにできていない。かつてのような、集票マシーンとしての勢いがなくなっています」
9月には山口那津男代表が勇退し、石井啓一幹事長が代表に就くことが有力視されているが、「この難局に体制を変えることがいいのか」と慎重論も出てきた。
さらに「安倍氏の遺志を継げ」という形で自民党保守派は、年末に予定されている政府の国家安全保障戦略など3文書の改定で、中国に対抗し防衛力を整備すると明確にすること、憲法改正のスケジュールを決めることを、政府に強く求める意向だ。
「公明党は来年4月の統一地方選を、中国を仮想敵国とした軍拡、憲法改正を争点にしては戦えない。自民党と正面から対決せずに、なんとか曖昧にしたいはずです」(自民党関係者)
沈黙は金なり──!?
(健田ミナミ)