テリー この前、韓国が人工衛星を打ち上げましたけど、日本の宇宙技術のレベルは、どのぐらいなんですか。
野口 日本は「HII」という巨大ロケットがありますし、1970年に自力で人工衛星を上げていて、これは中国よりも早いんです。そういう意味では世界の中でも、特に人工衛星の打ち上げに関しては、宇宙大国と言えると思います。一方で、現時点では有人ロケットの打ち上げ経験は、日本にはありません。
テリー それは予算的な問題で?
野口 それもありますし、完全に担保できないと、なかなか国の計画として進められないというところだと思いますね。
テリー 最近は民間企業がどんどんロケットの打ち上げに乗り出してますよね。
野口 有名なのがイーロン・マスクが創設した「スペースX」ですよね。彼は「テスラ」の工場の端っこでロケットを作ると言って、その工場がLAX(ロサンゼルス国際空港)のそばにありますね。
テリー それだけロケットを作るのが簡単になったっていうことですか。
野口 そうなんです。ロケット自体は、ガガーリンさんの1961年から始まって、もう半世紀以上になりますから、一部はすでに枯れた技術なんですね。例えば、3人乗りのカプセルで宇宙に行って帰ってくるという目的に限れば、すでに確立したシステムだけでできるんです。ですから、日本だとイーロン・マスクばかりが有名ですけど、Amazonを創設したジェフ・べゾスさんの「ブルーオリジン」という会社ですとかね、そういう会社が、まさに出始めてますね。
テリー 前澤(友作)さんが2人分で100億かけて宇宙に行ったじゃないですか。あれ、いくら何でもかかりすぎですよね。
野口 アハハハハハ。彼にとっては大した額じゃないんでしょうね。私にはとても払えません(笑)。
テリー 例えば、あと10年ぐらいすると、いくらぐらいで行けるんですか。行き方にもよると思うんですけどね。
野口 前澤さんは、12日間ISS(国際宇宙ステーション)に滞在してますから、そういう意味では私が宇宙飛行士になった頃に、第1線のプロ宇宙飛行士がやっていたことと、ほぼ変わらないことを民間人の方が訓練なしでできる時代にはなってきてますよね。お金はかかりますけど。
テリー 訓練なしで行けるってすごいですよね。
野口 そうですね。ですから、危険な作業や訓練が必要な複雑な作業はプロに任せて、お客さん用の座席が作れるようになってきたと、今はそういう感じかなと思います。
テリー バカみたいな質問ですけど、宇宙人にも会えるんですかね。
野口 いや、バカな質問でも何でもなくて(笑)。これは僕、皆さんに同じことを言うんですけど、この広い宇宙で、我々地球型生物だけが唯一と思うほうがおこがましいと。ですから我々と同じぐらい、あるいは我々以上の知的な生命体は必ずいると、これはもう私の信念です。
テリー 絶対にいる!
野口 でも、それと同じくらいの信念で、少なくとも我々が生きている間に知的な生命体と遭遇することはないだろうと。そのぐらい宇宙は広いですから。そういう意味で、「うちの近所のビルの上に円盤が」みたいな話は全然信じてません。
テリー そうか(笑)。
野口 それより30世紀ぐらいにタイムマシーンが開発されて、未来人が来てると考えるほうが整合性が取れると思いますね。「しまった、過去の人たちに影響を与えたらいけないのに姿を見せてしまった」みたいな(笑)。そのほうがよっぽど可能性はあるでしょうね。
◆テリーからひと言
ほんとに楽しい、夢のような時間だったな。最近は半径5メートルの狭い世界で揚げ足取りをする人が多いから。大きなスケールでものを見られる野口さんに、ぜひ文部科学大臣になってもらって、子供たちに夢を与えてほしいね。