コロナウイルスがオミクロン株のBA.5に置き換わって以降、新規感染者数は増加するばかり。7月21日には東京都で初めて3万人を突破し、全国でも過去最多の18万人を超え、過去最多となった。
BA.5は現行のワクチンが効きづらい特性を持つ一方、重症化リスクが低いとの見方が圧倒的だが、ここへ来て気になるデータが現れた。サイエンスライターが説明する。
「東京大学医科研究所の佐藤佳教授によると、BA.5はデルタ株が持っていたL452Rという特徴的な変異を持っているという。つまり、肺で増えやすいという特性を獲得したオミクロン株とも言えるそうなのです」
いったいどういうことなのか。
「医科学研究所ではBA.5の性質を知るために、ヒトの肺の細胞で実験。BA.2、BA.5それぞれを感染させると、BA.5はBA.2に比べウイルスが18.3 倍も増えたという。そうした結果を踏まえ、BA.2が気管でウイルスが増殖する性質を持つ一方、BA.5は肺でも増殖する可能性があることを指摘したのです」(前出・サイエンスライター)
またハムスターを使った実験でも同様で、BA.5はBA.2に比べ、肺で感染したウイルスが5~6倍も増加したというのである。
「これはあくまでシャーレの中での実験であり、加えて新型コロナに対する免疫を持たない動物での実験であるため、ワクチン接種で免疫を獲得した人間で同じことが起こるかは分からないそうです。ただし、実験結果によりBA.5がBA.2より感染力が強い上、病原性も高い可能性が出てきたことは確かです」(前出・サイエンスライター)
佐藤教授は「BA.5はBA.2から明らかに性質が変わっている」と述べ、油断をしないように警鐘を鳴らしている。肺のウイルス増殖は重症化リスクへとつながるだけに、今は予防対策を緩める時期ではないのかもしれない。
(蓮見茂)