社会

東京都「首都直下地震等被害想定」の大ウソを暴く(21)離島を襲う「28メートル巨大津波」で観光客もろとも…それでも死者数「極少試算」の超ノーテンキ

 南海トラフ巨大地震(マグニチュード9クラス)が発生した際、島嶼部(大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島、父島、母島)を襲うことになる「津波被害」について、都の防災会議はその「最大死者数」を678人(地震が冬の昼に発生した場合)から953人(地震が冬の早朝に発生した場合)と想定している。

 複数の島嶼部支庁での勤務経験がある都の元知事部局幹部は、実態を次のように明かす。

「島嶼部観光がまさにトップシーズンを迎える夏季には、観光客数が島民人口と同数以上に膨れ上がる島も少なくありません。その大半は海水浴やサーフィン、ダイビングなどのマリンスポーツを楽しむために来島する観光客。これらの観光客が宿泊するホテルや旅館、民宿やペンションなどは、標高の低い海沿いに集中しています」

 そんな状況で大災害が発生した場合、いかなるシーンが目の前に広がるのか。

「南海トラフ巨大地震で、父島と母島を除く各島嶼部には、最大津波高にして約7~28メートルもの津波が、およそ30分以内に押し寄せるとされています。中でも式根島と神津島は約十数分で30メートル近い大津波に襲われ、夏のトップシーズンであれば、島内人口と同等数の観光客からも、多数の死者が出ると考えなければならない。つまり、観光客の少ない冬の早朝の地震発生を想定して弾き出された最大死者数は、最大どころか、最悪のケースで予測される真の最大死者数の半分にも満たない数字だということになる」(前出・元知事部局幹部)

 なぜ、そんなデタラメな想定になったのか。元知事部局幹部がさらに続ける。

「おそらく、島嶼部の観光産業への配慮があったのでしょう。だからといって、真実を捻じ曲げていいという話にはなりません。最悪のケースを公にした上で、必要十分な対策を講じていく。それが危機管理のあるべき姿だからです」

 その時、島外からの大勢の観光客で賑わう島嶼部で、映画「ジョーズ」で描かれたような「まさか!」が起こらないことを祈るばかりである。

(森省歩)

ジャーナリスト、ノンフィクション作家。1961年、北海道生まれ。慶應義塾大学文学部卒。出版社勤務後、1992年に独立。月刊誌や週刊誌を中心に政治、経済、社会など幅広いテーマで記事を発表しているが、2012年の大腸ガン手術後は、医療記事も精力的に手がけている。著書は「田中角栄に消えた闇ガネ」(講談社)、「鳩山由紀夫と鳩山家四代」(中公新書ラクレ)、「ドキュメント自殺」(KKベストセラーズ)など。

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