被災地の現状を報じるメディアは少なくなるばかりだが、法廷では連日、被災者を食い物にした悪魔たちの断末魔が響き渡っている。世界から「なかった」と称賛された「震災犯罪」の真実を、徹底追及する。
東日本大震災は、未曾有の被害のみならず、それに便乗した多くの犯罪者を生み出した。震災から3年が経過した今も、法廷では被告たちの耳を疑うような供述が飛び交っているのだ。
「ノートパソコンやマッサージクッションなど、欲しい物を欲しいだけ買った」
震災発生からわずか2日後のドサクサに紛れて、停電中のショッピングモールの金庫から60万円相当の商品券を盗んだのは、泥棒を取り締まる立場の警備員だった。窃盗罪で逮捕された30代の男は悪びれる様子もなく、
「金庫の蓋が開いていて、深く考えずにとっさに盗ってしまいました」
と証言。
こうした例は枚挙にいとまがない。震災発生から20日後、大津波で被災した無人の住宅に忍び込み、テレビやパソコンなどを盗んだ窃盗グループの裁判では、メンバーたちは堂々と「余裕で盗めるじゃないですか」「タダで手に入るならそのほうがいいと思いました」と言いのけた。
被災地ではインフラも崩壊。火事場泥棒も相次いだ。小学校の倉庫などから、備蓄していたガソリン缶や発電機を盗んだ30代の男に至っては、検察官の質問に対し、「悪いと思っていたら誰も犯罪なんてしないと思います」と逆ギレする始末だ。
「震災裁判傍聴記」(扶桑社)を上梓した法廷ジャーナリストの長嶺超輝氏があきれ顔で語る。
「懲役3年6カ月の実刑を言い渡された被告人は、なげやりな言葉を繰り返すのみで、最後まで反省の弁は語られませんでした」
震災直後には、無人のATMから現金を奪う窃盗事件も頻発した。警察庁は震災発生から約4カ月の間に岩手、宮城、福島の3県で起こったATMを狙った窃盗事件は56件(うち未遂7件)、被害総額は約7億円にも上ると発表している。
「件数、金額ともに6割以上が福島に集中し、被害は34件、金額にして4億7700万円にも上りますが、その多くはプロ集団の犯行と見られ、いまだ未解決です」(地元紙記者)
数少ない摘発事例でも、犯人グループのゲーム感覚ぶりが明らかになった。
宮城県東松島市のコンビニに侵入し、店内のATMを工具で破壊して1300万円を盗んで逮捕された5人組の裁判では、
「主犯格の一人が当初から否認を続け、第3回の公判では車椅子で出廷し、衰弱ぶりをアピールしていました。でも、次の公判で被告人が1万円の札束を扇子に見立て、大富豪気取りではしゃいでいる写真が検察側から状況証拠として提供されて、万事休すとなった」(長嶺氏)
被災地を食い物にする悪魔たちの“断末魔”に、怒りが込み上がるばかりだ。